研究チームは、世界規模の医療データベース「TriNetX」に登録された電子カルテを利用し、肥満を伴う糖尿病予備群の成人25万6492人のデータを分析した。対象者の平均年齢は52歳で、76%が女性だった。
セマグルチド、チルゼパチド、リラグルチド、デュラグルチドなどのGLP-1関連薬を処方された人と、メトホルミンを服用している人を比較した結果、GLP-1関連薬の使用者は血糖値が正常範囲に戻る可能性が約1.5倍高かった。
さらに、2型糖尿病の発症リスクは31%、あらゆる原因による死亡リスクは41%低かった。心筋梗塞の発症リスクも15%、脳卒中は20%、心不全は25%、心房細動は8%低かった。
ただし、こうした結果は有望であるものの、薬そのものが健康状態の改善をもたらしたと証明されたわけではない。
研究には参加していない米コーストライン・エンドクリノロジーの創設者で内分泌専門医のブラッドリー・ノイテルは「観察研究からも有益な関連性を見いだすことはできるが、厳密な臨床試験ほど確かな結論は得られない」と話す。「GLP-1関連薬を使用する患者とメトホルミンを服用する患者では、健康状態や生活習慣、医療へのアクセスなどが異なる可能性がある」
年齢や肥満の程度、併存疾患、ほかの薬の使用といった要因も考慮する必要があるという。
一方、セラは、今回の結果がGLP-1関連薬のより幅広い可能性を示唆しているとみる。「これまでの研究の大半は、すでに2型糖尿病を発症した患者を対象としていた。だが今回は、まだ発症を食い止められる段階にある糖尿病予備群と肥満の患者を調べた点に意義がある」
ただし、従来の標準治療を置き換えるものと受け取るべきではないとセラは指摘する。「糖尿病の発症を待つのではなく、予備群の段階でGLP-1関連薬の導入を選択肢として検討する価値はある。だが、メトホルミンは依然として安全で安価な第一選択薬であり、生活習慣の改善が治療の基礎であることに変わりはない」
なお、今回の研究は電子カルテに基づく観察研究であり、薬が直接的に健康状態を改善したと断定することはできない。また、学会で要旨が発表された段階で、専門家による査読を受けておらず、学術誌にも未掲載の段階だ。