人の成長が技術や設備を進化させ、ものづくりに還流させるサイクル

同社がサステナビリティの柱と位置づけるのは資源循環だけではない。2019年頃からSDGsを従業員教育に取り入れ、「私たちにできることを考え、行動する」を基本に、地域清掃など身近な活動から始めた。事業所の推進リーダーは立候補を基本とし、多様な考えを尊重する。小さな達成を重ね、従業員の自発性を育む仕組みだ。

その考え方が試されたのが2020年のコロナ禍だった。取引先の工場も稼働を制限され、包装資材の仕事が大きく減少。代表交代から約1年という時期に、代表取締役の本橋志郎氏らは「今、私たちだからできることは何か」を問い、身近な部材で安価に作れるフェイスシールドの開発に着手した。

ゴールデンウイーク中に基礎設計を進め、従業員も加わって約1週間で設計を完成。翌週には寄贈品の製造を始めた。マスクで口元が見えず意思疎通に困っていた聾学校に届けると、「これで安心して授業を進めることができる」との声が寄せられた。長時間使用する人の負担を減らすため、包装資材で培った緩衝設計を応用した改良品「匠のフェイスシールド」も生まれた。

これを機に、従業員から不要になった段ボールのアップサイクルや、製造時に発生する端材を担架として活用する案が出てくるようになり、それらの発想が次々と形になっていった。

変化はものづくりだけにとどまらず、「地域や次世代のためにできることはないか」と考えた従業員が自ら学校へ出向き、職場体験の受け入れを提案する動きも生まれた。現在では、小学生への出前授業や特別支援学校の生徒を対象としたインターンシップ、大学生との共創など、活動の幅を広げている。

「当社が循環させているのは、廃棄プラスチックという資源だけではありません。『人の成長→技術の進化→新たな価値→さらなる人の成長』という循環も、サステナブル経営を支える重要な力となっています」と、本橋氏は言い切る。

SDGsを従業員教育に取り入れ、地域貢献や次世代育成にも励んでいる
SDGsを従業員教育に取り入れ、地域貢献や次世代育成にも励んでいる

2027年1月に同社はトレーサビリティをさらに強化し、使用している原料の由来や特性、どのような材料を組み合わせて製品がつくられているのかを、より見える形にしていく計画だという。廃棄プラスチック以外の循環資源や新素材にも視野を広げ、20年前に描いた未来が現在の選択肢となっているように、次の10年、20年に向けて技術と人を育て続けていく方針だ。

国際情勢の変化による原料供給の不安定化や、限りある資源の有効活用は、日本のものづくりが向き合い続けなければならない課題だ。こうした課題に対し、社会の変化を先取りして技術を磨き、人を育て、新たな選択肢を生み出してきた同社の姿勢は、持続可能なものづくりのあり方を考えるうえで、1つの示唆を与えている。

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