<イーロン・マスクが、アメリカの全ての子供にスペースX株を1株ずつ贈与すると表明した。総額100億ドルを超える異例の計画の背景には、AI時代の富の分配をめぐる新たな構想と、マスク自身の思惑がある>

世界一の大富豪イーロン・マスクが10月19日、アメリカの全ての子供にスペースX株を1株ずつ贈与すると表明した。世界の政治経済の構造を根底から覆しかねない歴史的転換点だ。

アメリカの18歳未満の子供は約7300万人。贈与される株式の評価額は総額100億ドルを超えるが、それはこの革新的な試みのごく一部にすぎない。これは「ユニバーサル・ベーシック・キャピタル(UBC=普遍的基礎資本)」時代の幕開けだ。AIがもたらす破壊的影響への対策として、左右両派の政治家も関心を寄せ始めている。

UBCを理解するには、まず先行する構想「ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI=普遍的基礎所得)」との違いを理解しなければならない。UBIは最低限の生活を保障するため、国家が個人に一定額の現金を支給することを提唱する。基本的に消費面への介入であり、UBIは魚を与えるが、漁船の所有権は与えない。

これに対してUBCは資産の所有に重点を置く。前提にあるのは労働と生産の分離が進む自動化された未来において、破滅的な富の不平等を回避するには、全国民を生産手段の株主にするしかないという発想だ。

この出生時からの資産所有という考え方は、「トランプ口座」を通じて具体化される。今年7月にトランプ政権が立ち上げたこの制度は、アメリカの子供向けに課税繰り延べの投資口座を自動的に開設するというもの。超富裕層や企業は個別企業の株式をこの口座に直接寄付できる。

マスクの最大の動機が博愛精神だと考えるのは甘い。常に時代の大きな枠組みを見据えて動いてきたマスクが、AIとロボット技術の利益を分配する「ユニバーサル・ハイ・インカム(普遍的高所得)」の時代が来るとみているのは確かだ。

現政権との一体化
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