男性向けの避妊薬が、実用化に向けて一歩前進した。服用から約30分で精子の動きを一時的に抑え、6〜8時間にわたって妊娠を防ぐ実験薬について、臨床試験へ向けた本格的な研究が進められることになった。

米ワイル・コーネル医科大学の研究チームは、米国立小児保健人間発達研究所(NICHD)から数百万ドル規模の研究助成金を獲得した。4年間にわたる今回の助成を通じ、ヒトへの安全性を検証する。

米疾病対策センター(CDC)のデータによれば、全米における妊娠の約40%が意図しないものだ。一方、現在男性が選べる避妊法はコンドームと精管切除術(パイプカット)に限られ、避妊の負担は実質的に女性へと偏っている。

米イェール大学の細胞・分子生理学准教授、ジーンジュ・チャンによると、女性のおよそ3分の1は、主に副作用を理由に使用開始から1年以内にホルモン避妊法をやめている。

「受精前に作用し、健康な人が継続的にホルモンを摂取する必要がなく、男性も避妊の責任を担える選択肢が求められている」とチャンは述べる。

今回の薬の鍵を握るのが、「可溶性アデニル酸シクラーゼ(sAC)」と呼ばれる酵素だ。精子の内部に存在し、射精後に精子が受精に向けて泳ぎ進むために不可欠な役割を果たす。

研究を率いる薬理学者のヨッヘン・バックとロニー・レヴィンは、この酵素の働きを一時的に「オフ」にする化合物を特定した。錠剤を服用すると有効成分が精子に入り込み、射精後もsACの働きを抑え続けるため、精子は卵子まで到達できなくなる。

一方、時間の経過とともに体内の薬物濃度は低下する。6〜8時間後には精子の動きを阻害する水準を下回り、自然と元の生殖能力に戻る仕組みだ。

直接作用し、短時間で効果
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