Nick Carey Christina Amann

[パリ 16日 ロイター] - 中国自動車メーカー各社は、欧州の消費者が「伝統」ではなく「技術」を軸とした新しい高級車観を受け入れる将来に賭けている。長安汽車傘下の阿維塔(Avatr)や比亜迪(BYD)傘下の騰勢(Denza)などが市場開拓へ掲げるのは「インテリジェント・ラグジュアリー(知能化された高級車)」と呼ぶ概念だ。

これまで中国メーカーは、手頃な価格と先進技術を武器に欧州の大衆車市場で急速にシェアを伸ばしてきた。今は、より収益性の高い高級車市場に照準を合わせている。

12日にフランスのパリで開幕した自動車国際展示会「パリモーターショ​ー」では、中国ブランド各社が先進運転支援システム(ADAS)や急速充電機能、多彩な快適装備を搭載した高級車を披露した。欧州の消費者に、なじみの薄い中国ブランドを既存の高級ブランドに代わる選択肢として選んでもらう狙いだ。

もっとも欧州の高級車購入層の信頼を得るには時間がかかるとの見方が強い。

中国の電気自動車(EV)メーカー小鵬汽車(Xpeng)の副社長、ジェン・イエチン氏は「この市場で存在感と信頼性を築くには十分な時間が必要だ。粘り強く取り組まなければならない」と指摘する。同社は2020年に欧州市場へ進出し、26年1─8月の欧州販売台数は前年同期比で2倍超となり、2万9000台を上回った。

欧州の高級車市場はドイツのBMW 、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン傘下のアウディが支配している。欧州では長年にわたり築かれてきたブランドの歴史や伝統が中国市場よりはるかに重みを持つ。対照的に中国の消費者は技術機能をより重視する。

中国国内では26年上半期の自動車販売が20パーセント減少し、競争も激化している。このため、中国メーカーにとって利益率の高い高級車市場の開拓は一段と重要になっている。主戦場として浮上しているのが欧州だ。中国メーカーは実質的に米国市場から締め出されている一方、BMW、メルセデス、アウディ、ポルシェの4ブランドは今年1─9月だけで欧州で約200万台を販売した。

吉利汽車傘下のジーカーなど中国ブランドは、価格競争力と先進技術を武器に、中国国内では既にドイツ勢の高級車ブランドからシェアを奪っている。そうした中、阿維塔はパリで電動高級セダンとSUV(スポーツタイプ多目的車)を公開した。価格は約6万ユーロ(約1064万円)からで、急速充電機能に加え、全座席にマッサージ機能を備えるなど快適装備を充実させている。

阿維塔の海外展開を統括するジャスティン・リー氏によると、5万ドル超の車の販売では米国を除けば、欧州が72%を占める。同氏は「プレミアムブランドを目指すなら、欧州に進出しなければ本当に成功したとは言えない」と語った。

<高級感の再定義>

ドイツの高級車メーカーが新型車を発表する際には、20世紀初頭の職人が木材を丁寧に削り出し、高級な内装を仕上げる様子など、ブランドの伝統を強調する映像がよく用いられる。一方、パリで行われた中国ブランドの発表は様相が異なっていた。

問界(Aito)の電動SUV4車種の発表会では、親会社である賽力斯(Seres)の副社長、クリフォード・カン氏が「インテリジェント(知能化された)技術」を前面に押し出した。会場で流された映像では、車両が自動で障害物を回避したり、ボンネット上にシャンパングラスを置いたまま一滴もこぼさず走行したりする様子が紹介された。

カン氏は「先端技術を使った知能化で高級感を再定義する」と強調した。

コンサルティング会社グラント・ソントン・スタックスのパートナー、ブラッド・クンツ氏は、中国メーカーが一部消費者にとっての高級車の概念を変えつつあると指摘。「かつての欧州車には、職人技による特注品的な高級感があった。しかしEV時代には、技術そのものが洗練さや上質さを生み出している」と解説した。

欧州勢も新たな競争相手を注視している。

アウディの広報担当者は「アウディは中国勢を含む国際的な競争の激化を自信を持って受け止めている。欧州の政策当局には、公平な競争環境を確保する責任がある」と語った。

フォルクスワーゲン傘下の超高級ブランド、ベントレーは余裕を見せる。

先月行われた同社初のEV発表会で、フランクシュテフェン・バリザー最高経営責任者(CEO)は記者団に「本物のラグジュアリーは欧州の中心から生まれるものであり、代替はできない」と言い切った。

匿名を条件に取材に応じた中国大手自動車メーカーの幹部は「本音を言えば、われわれと欧州の高級ブランドとの間にはまだ差がある」と認めた。それでもこの幹部は「10年から20年のうちには追い付けるはずだ」と自信も示した。

現時点では、中国ブランドの高級車販売が欧州市場全体に占める割合はまだ小さいものの、成長スピードは速い。

ジーカーの26年1-9月の欧州販売は9525台と、前年同期の3025台から3倍超に増加した。既に欧州22カ国に進出しており、今年中にさらに8カ国へ展開する計画だ。欧州部門のロタール・シューペット最高経営責任者(CEO)は「現在の立ち位置は非常に強固であり、今後も成長を加速させていく」と述べた。

また阿維塔のリー氏によると、同社は段階的な欧州展開を進める方針で、27年にスペイン、英国、デンマークへ進出した後、28年にはドイツを含む数カ国へ販路を広げる計画だ。同氏は「この挑戦を成功させる機会は一度しかない」と語った。

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