Anhata Rooprai Aditya Soni
[15日 ロイター] - 人工知能(AI)向けクラウドサービスを手掛けるコアウィーブの債務急増を受け、投資家の間でAIブームの持続可能性に対する懸念が強まっている。市場に広がるのは、データセンター建設のために借り入れが膨らむ一方、その投資を正当化できるだけの需要が本当に見込めるのかという疑問だ。
エヌビディアが支援するコアウィーブの株式と社債は、マイク・イントレーター最高経営責任者(CEO)が契約残高の強さを強調したにもかかわらず下落した。この動きはテクノロジー株全体の売りを誘発している。
投資家が何を懸念しているのか、そして同社の問題がAI業界全体にどのような影響を与える可能性があるのかをまとめた。
◎コアウィーブとは
コアウィーブは、エヌビディア製プロセッサーによる計算能力を、マイクロソフトやオープンAIなどAIの開発・運用を行う企業へ貸し出している。「ネオクラウド」と呼ばれる新興クラウド事業者の代表格で、高価かつ供給が限られるAI向け半導体への需要増加を背景に急成長してきた。
ネオクラウド企業は、顧客が自前でデータセンターを建設しなくてもAI向け計算資源を利用できるようにする。ただ、そのサービス提供には半導体やインフラへの巨額な先行投資が必要となり、多くの場合は借り入れによって資金が賄われている。
◎財務状況
コアウィーブはこれまで一度も最終黒字化を達成していない半面、LSEGのデータによると負債総額は約500億ドルに上っている。
8月には年間設備投資計画を40億ドル引き上げ、350億─390億ドルに拡大した。アナリストは今年の売上高を約130億ドルと予想する一方、21億3000万ドルの赤字を見込む。
同社の2031年償還のジャンク債利回りは約16%まで上昇した。債務不履行リスクを保証するためのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)コストも約1000ベーシスポイント(bp)に達し、債権者の警戒感が強まっていることがうかがえる。
これに対しイントレーター氏は、ロイターが確認した社内メモの中で、契約残高は債務返済に十分対応できる水準だと説明した。同社の第2・四半期末時点の売上契約残高は1042億ドルで、第3・四半期初めにはさらに250億ドル超の新規契約が積み上がったという。
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOも懸念を一蹴。コアウィーブの財務体質は改善しているとして、救済支援の必要性はないとの見解を示した。またエヌビディアは、32年4月まで売れ残ったコアウィーブの計算能力を買い取る契約を結んでいる。
◎「炭鉱のカナリア」か
コアウィーブの事業は(1)AI計算需要の拡大(2)それを支える設備投資に対して金融市場が資金を供給し続けること、という2つの要素に依存している。
同社は強い需要を主張しているが、株価下落は投資家が資金調達面に不安を抱いていることを物語る。
市場が恐れているのは、AI需要自体が突然消滅することではない。むしろ、借入コストが上昇した中で需要が予想以上に鈍化した場合、現在の事業モデルが維持できなくなるリスクだ。
IGグループのチーフ・テクニカル・アナリスト、アクセル・ルドルフ氏は「これはAI計算需要への関心が急減したというよりも、その拡大資金をどのように調達しているかに対する投資家の疑問を反映している」と指摘した。
XTBのリサーチディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「コアウィーブは急速にAI投資テーマ全体の『炭鉱のカナリア(危険信号)』になりつつある」と述べた。
◎市場が神経質な理由
投資家が疑問視しているのは、AIから生まれる収益が、インフラ建設と資金調達にかかる膨大なコストの増加ペースに追い付けるのかどうかだ。コアウィーブは契約収入を得る前に巨額投資を行う必要がある。金利が上昇すれば資金調達コストはさらに膨らみ、収益性は一段と圧迫される。
さらに、半導体そのものにもリスクがある。新世代チップが登場すると既存チップの価値は急速に低下するため、事業者は継続的な更新投資を迫られる。
こうした懸念はコアウィーブだけの問題ではない。米国の大手テクノロジー企業による今年のAIインフラ投資額は、合計で7000億ドルを超えると見込まれているからだ。
◎懸念される悪影響
最も懸念されるシナリオは、AIインフラ向け融資市場全体が引き締まる展開。貸し手がより高い利回りを要求したり、AI関連プロジェクトへの融資に慎重になったりすれば、多くの事業者は設備拡張計画の縮小を迫られる恐れが出てくる。その結果、サーバーや半導体などの設備需要が鈍化し、顧客が期待する計算能力の供給にも影響が及びかねない。
今回の問題が「AI投資ブームは収益創出能力を上回るペースで進んでいるのではないか」という疑念を一段と強めれば、テクノロジー株全体への売り圧力が高まる可能性もある。
もっとも、コアウィーブが経営危機に陥ったとしても、その影響の大きさは事業再編の内容次第であり、大手テクノロジー企業との関係だけを理由に金融システム全体へ波及するような危機に発展するとは限らない。
◎他にリスク企業は
ガートナーは、ネオクラウド事業者の約80%が30年までに事業継続できなくなる可能性があると予測している。期待されるAI収益だけでは、計画されている全てのインフラ投資を採算ベースに乗せることは難しいという見方だ。
今回のテクノロジー銘柄売りでは、ネオクラウド企業のネビウス、アプライドデジタル、アイレンの株価も下落した。オープンAIへの大型投資を進めるソフトバンクグループについても、信用リスクをヘッジするコストが上昇している。
アマゾン・ドット・コム、グーグル親会社アルファベット、メタ、エヌビディアも社債スプレッドは過去最高水準まで拡大しているが、その上昇ペースはコアウィーブほど急ではなく、これらの企業にはより大きなキャッシュフローと強固な財務基盤がある。