Manya Saini Saeed Azhar Tatiana Bautzer

[14日 ロイター] - 米大手銀行は人工知能(AI)ブームに乗りつつも荒波に巻き込まれるのを避けたい意向だ。AIインフラ向け融資が巨額の収益機会をもたらすと期待される一方、投資収益への疑問や新たなセキュリティー上の脅威が浮上しているためだ。

米大手銀行の幹部からは今週、AIエージェントが顧客に代わって行動するリスクや、AIの急速な普及に必要な資本と計算能力への需要を巡る不透明感に関する発言が相次いだ。

ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)はアナリストとの電話会議で、「AI投資サイクルで当社が重要な役割を担っていることを誇りに思う。一方、AIのエコシステム全体が成熟するにつれ、資本と計算能力への需要がどう変化するかは誰にも分からない」と発言。「テクノロジーと市場が発展し続けるなかで、状況は次第に明らかになるだろう。この不確実性があるからこそ、どのような活動に融資するのか、リスクをどう管理するのかについて、警戒を怠らないことが重要だ」と語った。

シティグループのジェーン・フレーザーCEOは、「AIエコシステム全体で、投資の減速は見られない。単純に、計算能力が不足している」と述べ、金利上昇によってAIインフラへの投資が鈍化することはないとの見解を示した。

<AI向け融資はビジネスチャンス>

AIインフラへの投資規模は前例のない水準に達している。大手テクノロジー企業は、生成AIモデルの学習や稼働に必要な計算能力の基盤となるデータセンターの建設に、数十億ドル規模の資金を投じる方針を示している。米銀にとって、このインフラ整備は、数十年に一度ともいえる大規模な投資サイクルへの融資機会となる。

バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEOは、AI関連の巨額設備投資が同行の投資適格債事業やレバレッジド・ファイナンス事業にとって重要だと述べた。

しかし融資機会が実際に実を結ぶには、いくつもの不確定要素に左右される。計算能力への需要が業界の野心的な拡張計画に追いつくのか、データセンター事業がどれほどの投資収益を生み出せるのか、地元で反対運動が起きる可能性はないのか、といった点だ。

ウェルズ・ファーゴのチャーリー・シャーフCEOは決算発表後のアナリスト向け電話会議で、「AI投資サイクルは、それ自体が複雑なマクロ経済要因となっている」と述べた。そしてデータセンターなどの整備は大きな事業機会をもたらす一方、多額の借り入れを伴う資金調達や、一部の業界・サプライチェーンでの価格上昇圧力など、リスクも伴うと指摘した。その上で、「これまでのところ、経済の底堅さと、こうした投資がもたらすプラスの効果が、潜在的なマイナス面を上回っている」と述べた。

ただ、金利が高止まりしたり、さらに上昇したりすれば、データセンター事業の資金調達コストが膨らみ、投資収益が圧迫される可能性がある。また、借り手にとって債務返済の負担も重くなる。

モルガン・スタンレーのシャロン・イェシャヤ最高財務責任者(CFO)はロイターとのインタビューで、同行は引き受けるリスクの種類を「非常に慎重に見極めている」と述べた。「懸念されるのは、同業他社などが融資基準を緩め、それが問題を引き起こすことだ。当社は、そうした取引に関与しないよう細心の注意を払っている」という。一方、同社のテッド・ピックCEOはアナリストとの電話会議で、AI関連融資への関与は同社にとって「極めて重要だ」と述べた。

投資家も、AIブームがもたらす経済的な恩恵と、融資が損失につながるリスクを見極めている。

複数の銀行株を保有するガベリ・ファンズのポートフォリオマネジャー、マクレー・サイクス氏は、「テクノロジー関連支出が経済全体の成長を後押ししている限り、銀行にとって重要なプラス材料だ。ただ、投機的なデータセンター建設のような特定の事業に信用リスクが直接結び付いている場合、将来問題につながる可能性がある」と述べた。

一方で、銀行は懸念されているよりもAI関連リスクをしっかりと管理しているとの見方もある。各行が金融危機後にリスク管理の慣行を厳格化してきたためだ。

ヘネシー・ファンズのポートフォリオマネジャー、デーブ・エリソン氏は、銀行は金融危機の教訓を忘れておらず、投資家が懸念する以上に慎重に行動していると述べた。銀行はAI関連融資を支えているものの、リスクを投資家に分散するアレンジャーの役割を果たしている場合が多いという。

<新たなAIリスクの封じ込め>

銀行はインフラ整備向け融資に加え、コスト削減や生産性向上を目指して自社業務にAIを導入している。しかし、導入による財務上の効果を測るのは、依然として難しい。

JPモルガン・チェースのジェレミー・バーナムCFOは、「このテーマがどれほど重要で、大きな変化をもたらすものであっても、当行ほどの規模の金融機関で目に見える形で成果を出すには長い時間がかかる」と述べ、四半期決算にまだ効果が表れていないのは想定内だとの見方を示した。

一方、シティグループのフレーザーCEOは、AI活用による明確な効果がすでに表れていると説明した。例えば、製品開発のコストを抑えながら、開発期間を最大40%短縮できているほか、コーディング支援ツールの活用によって開発作業が容易になり、技術関連の外部委託先への支出を30%削減できたという。

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