Takahiko Wada
[熊本市 15日 ロイター] - 日銀の小枝淳子審議委員は15日、緩和的な金融環境が続くもと、物価上昇リスクが「相応にある」ことを踏まえれば、「利上げに過度に慎重になることはない」と述べた。経済・物価に対して引き締め的でも緩和的でもない中立金利は「推計レンジの下限の目安である1%よりは相応に上」と明言した上で、経済・物価の状況を見ながら、政策金利を適時に調整していくべきだと語った。
熊本市で開いた金融経済懇談会であいさつした。
小枝審議委員はこれまで、金融政策運営に当たって重視している基調的な物価上昇率について「総じてみれば2%ぐらい」と指摘し続け、定着しているか注視してきた。今回のあいさつでは、幅広い品目で価格上昇が数年続いていることや、賃金も安定的な上昇がみられるとして「わが国の物価上昇率は、以前より持続的なものに定着しつつある」と踏み込んだ。
地政学リスクの高まりに伴う物価上昇リスクに「以前よりも注意を払う必要がある」とも述べた。市況上昇のみならず、近年では外為市場で「有事の円高」が見られにくくなっていると指摘した。
小枝委員は、経済・物価の動向や金融環境の確認にあたっては「プラスの金利が経済活動の前提となる中で、分析の視野を広げ解像度も上げることも重要」との認識を示した。
日銀スタッフによる自然利子率の推計に基づく中立金利の推計レンジは1.1―2.5%。9月の利上げで政策金利は推計レンジの下限を上回ったが、小枝委員は中立金利は「1%よりは相応に上」と語った。
自然利子率が潜在成長率に近似しているとの前提に立ち、2%物価目標を足せば中立金利は「2%を超えているという見方もある」とする一方で、短期金利の収束値も中立金利の「別の候補」だと説明。長年の非伝統的な金融政策の影響で短期金利はゼロ%近傍の推移が続いたため、「モデル上、短期金利の推計値は低く出てくる」とし、プラスの金利環境への移行を踏まえれば、短期金利の収束値は「以前より高い位置に切り上がっている可能性が相応にある」と述べた。
日銀は6月、来年4月以降は国債買い入れの減額を停止し、月2兆円程度の買い入れを継続することを決めた。小枝委員は「少なくとも数年間は償還額が買い入れ額を大きく上回る状況が続く」とした上で、「引き続きバランスシートが極めて大きい状況を軽視せず、バランスシートの正常化を粛々と進める必要がある」と話した。
中央銀行の国債保有の変化が長期金利に与える影響については「アクティブな拡大期よりパッシブな縮小期のほうが小さい可能性が相応にある」と述べた。