Arasu Kannagi Basil Prakhar Srivastava
[14日 ロイター] - 米大手銀行は今週の決算発表を通じて、投資銀行業務に楽観的な見方を示した。社債利回りの上昇や市場のボラティリティーが案件の遅れにつながる可能性はあるものの、企業買収や資金調達案件のパイプライン(見込み案件数)は堅調で、顧客との協議も活発に続いている点を理由に挙げている。
米主要銀行の第3・四半期の投資銀行手数料収入は、バンク・オブ・アメリカを除いておおむね増加した。
JPモルガン・チェースのジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)は「金利上昇を受け、市場は買い手と売り手が評価額で折り合えるかを見極めるため一時的に様子見となるだろう。実際、9月後半には若干の減速が見られた」と断りつつも「全体としては案件の中止よりも延期とみるべきだ。実行する必要があり、実行したい案件は数多く存在する」と付け加えた。
シティグループのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は「パイプラインは堅調だ。アドバイザリー業務と資本市場業務の中心は米国であり、欧州やアジアでも多少の持ち直しが見られるが、多くは米国主導だ」と語った。また企業による設備投資の継続や戦略協議の活発化に触れて、企業合併・買収(M&A)を巡る全体的な環境は前向きだとの認識を表明した。
過去1年間、投資銀行業界は関税問題や中東情勢など複数の逆風に直面したが、いずれも一時的な慎重姿勢を招いたにとどまり、M&A市場の回復腰折れには至らなかった。
モルガン・スタンレーのシャロン・イェシャヤCFOは「戦略的な投資家はここ数週間で買収案件に関する協議を再開した」と述べた。
ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOは「戦略的なM&Aの観点では、現政権の下での事業機会が少なくともあと2年超残っている。企業間の協議は非常に活発で、案件残高も極めて潤沢だ」と述べ、企業が規制環境の改善を追い風に積極姿勢を強めていると説明した。
ただ市場関係者の間では、借入コスト上昇や企業価値算定を巡る不透明感が案件の遅延要因になるとの警戒感も根強い。LSEGのデータによると、第3・四半期の世界のM&A案件総額は9930億ドルとなり、前期比41%減少した。大型案件の減少を背景に、2025年第2・四半期以降で初めて1兆ドルの大台も下回った。
一方米国の新規株式公開(IPO)市場は夏場以降、勢いを失っている。市場の不安定化や企業価値評価への懸念から投資家が選別姿勢を強め、上場計画が難しくなっているためだ。
原子力技術企業ホルテックやスマートリングメーカーのオーラなど有力企業が上場計画を延期したほか、ソフトバンクグループが支援するSBエナジーも米国でのIPOロードショー開始を先送りした。
ソロモン氏は「9月に状況はやや軟化した。IPO市場自体は開かれていたが、期待した評価額より10-15%低い水準しか提示されないケースがあった」と述べた。
これに対してモルガン・スタンレーのイェシャヤCFOは、企業が新たな評価水準を受け入れれば案件は再び動き出すとの見方を示した。
それでもIPO市場の門戸は狭まりつつあり、高金利環境の中で投資家の選別姿勢が強まる中で、バイオテクノロジー分野など一部セクターに関心が集中している。フレーザー氏は「株式市場関連業務は既上場企業による追加増資案件が中心になっている。IPO市場は依然として選別的だが、持続的な利益成長が見込める企業にとっては選択肢となる」と語った。