Vaishnavi Hajari Gianluca Lo Nostro Cassell Bryan-Low
[14日 ロイター] - ウクライナ軍が使用する衛星通信サービス「スターシールド」に障害が発生して作戦行動 に支障を来し、ゼレンスキー大統領は、首都キーウに対するロシアの弾道ミサイル攻撃について2夜連続で同盟国から事前警告を受けなかったと明らかにした。いずれのケースも、欧州の同盟国には即座に代替できるシステムがないという厳しい現実が浮き彫りになった形だ。
スターシールドは、米実業家イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXが展開する衛星通信サービス「スターリンク」を基盤とする軍事・政府機関向けシステムで、ウクライナ軍はドローン(無人機)運用や部隊間通信に活用している。ウクライナ当局によると、このスターリンクの利用が制限された影響で14日にスターシールドで高速移動中の端末に通信障害が起きた。これにより、攻撃任務や防空任務に投入されるドローンの運用が妨げられた。
障害や情報停止の理由は直ちには判明していない。ただトランプ米大統領がロシア産ディーゼル燃料に対する制裁免除の合意を発表するとともに、ゼレンスキー氏の交代を求めた後だけに、米国とウクライナの関係悪化を改めて印象付けた。
トランプ氏は13日、米国が引き続きウクライナと情報共有を行っていると述べた。マスク氏とスペースXはウクライナ側の主張についてコメントしていない。
欧州各国はウクライナとゼレンスキー氏への支持を表明しているが、今回の問題は、ウクライナと欧州が米国の宇宙システムに大きく依存している実態を示した。
低軌道衛星通信ではスペースXのスターリンクが中心的な役割を担っているほか、ミサイル早期警戒システムは米国の宇宙配備型赤外線システム(SBIRS)に依存している。
英シンクタンク王立国際問題研究所(チャタムハウス)のマーク・デボア上級研究員は「SBIRSはミサイル発射時に生じる熱を検知できる独自性の高いシステムだ。欧州に同等の能力は存在しない」と指摘した。
スターリンクについても、ウクライナ軍がそのまま利用可能な欧州製の代替サービスは現時点で存在しない。欧州各国政府や企業は長期的な代替策の構築に取り組んでいるが、実用化には時間を要する見通しだ。
こうした状況を受け、欧州衛星通信事業者ユーテルサットの株価が14日に急騰。投資家の間では、米・ウクライナの関係悪化により欧州企業が恩恵を受けるとの見方が広がった。
ただ独立系衛星コンサルタントのクリスティアン・フライヘル・フォン・デア・ロップ氏は、ユーテルサット傘下の低軌道衛星通信サービス「ワンウェブ」について「現在の衛星網は10年前に設計された古い構造と技術に基づいている」と説明し、通信容量や性能面の制約に加えて利用端末のコストや重量、サイズ、電力消費の大きさが前線での運用に適さないとの見方を示した。
また同氏は、スターリンクとスターシールドの端末が独自技術を採用しているため、ワンウェブへの切り替えには数千台規模の端末交換が必要になると付け加えた。
ウクライナ防衛技術企業バンター・エアロスペースの共同創業者ボーダン・サス氏は「今回のスターシールドの突然の停止は、単一のシステムに依存する危険性を示した。主権的な能力を持ち、誰かの気まぐれに左右されない体制が必要だ」と述べた。