Dan Catchpole
[シアトル 5日 ロイター] - 米海軍の次世代ステルス戦闘機の開発企業として、米航空宇宙大手ボーイングが9月29日に選定された。長年にわたる投資、空母搭載戦闘機の製造における数十年の実績、そしてアップグレードしやすい航空機を求める国防総省の意向に合致した設計アプローチが奏功したと、選定事情に詳しい関係者は分析した。
ボーイングは2025年3月にも空軍の新型ステルス戦闘機F47の開発企業に選定されており、第6世代戦闘機の主要契約の獲得としては2年連続での快挙だ。同社は海軍の次世代ステルス機「F/A-XX」の開発契約を巡り、競合のロッキード・マーティンやノースロップ・グラマンを退けた。契約規模は初期開発段階だけで200億ドル(約3兆1600億円)以上とみられる。
ボーイングの防衛・宇宙・安全保障部門は、大幅な予算オーバーや軍用機の開発遅延、さらに新型宇宙船「スターライナー」のトラブルに悩まされてきたが、今回の一連の契約獲得は長年の窮地を脱する好機となる。
「今やボーイングは、向こう半世紀以上にわたって米軍戦闘機の覇権を握ることになった」。航空宇宙コンサルティング会社エアロダイナミック・アドバイザリーのマネジングディレクター、リチャード・アブラフィア氏はそう表現した。「歴史上、これほどの事例はほかにない」
国防総省はF47およびF/A-XX開発プログラムの競合企業であるボーイング、ロッキード、ノースロップに対し、将来のアップグレードや改造を容易にするために共通の設計標準を採用することを義務付けた。
選定経緯に詳しい国防総省の元高官は「3社とも要請通りに対応したが、その受け入れ方や熱量には差があった。ボーイングの取り組みは効果的だった」と明かす。
この人物によると、同社はデジタル設計ツールを活用した点でも一線を画していた。これにより開発段階でエンジニア、軍関係者、整備担当者が変更点を検証し、機体を改良することが容易になったという。
国防総省およびロッキードはコメントを控えた。
ノースロップは声明で、F/A-XXの選定において「当社は高い生存性と高度なデジタル技術を備えた第6世代戦闘機を提案した」と主張。決定に異議を唱える前段階として、選定の経緯や理由に関し「米海軍に説明を申し入れた」と明らかにした。
<成功の保証はない>
今回の選定で、ボーイングの財務的な成功が確実になったわけではない。複数のアナリストは、結果は契約条件に大きく依存すると指摘しているが、これについてボーイングも国防総省もコメントを控えている。
ボーイングは空中給油機「KC46」、練習機「T7」、空中給油ドローン「MQ25」、大統領専用機「エアフォースワン」の後継機、スターライナーの開発案件を受注している。コスト超過分は同社が全額負担する「固定価格契約」となっているため損失が拡大しており、累計赤字は205億ドルに上る。
アブラフィア氏は「もし固定価格契約だとしたら、警戒すべきサインだ」と述べている。
ケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)は、高くついた失敗を繰り返さないため、今後は固定価格による開発契約を引き受けない方針を示している。
F47とF/A-XXに関する詳細はほとんど公表されていない。F47は2028年の初飛行、29年の就役が見込まれており、空軍はF22の後継機として少なくとも185機の調達を計画している。F/A-XXについては、さらに情報が乏しい。30年代に運用が開始され、最終的に海軍のF/A-18と順次交代する見通しだ。
開発契約の金額はそれぞれ200億ドルを超えるが、運用期間全体での製造事業となれば、数千億ドル規模の収益を生み出す可能性がある。
<戦闘機事業への巨額の賭け>
2001年にF35の契約をロッキードに奪われた後も、ボーイングは機密プロジェクトやF15およびF/A-18の改修事業を通じて技術力を維持してきた。F15の後継である改良型のF15EXは極めて高く評価され、空軍は調達を停止してから数年後に同機の買い増しを再開したほどだ。
コロナ禍以降、ボーイングは米国の次世代戦闘機を受注するため、新しい生産施設、技術開発力、デジタル設計ツールに数十億ドル規模の投資を行った。同社は2種の先進戦闘機を並行して開発することで、技術や設計上の特徴を共有できるため、リスクを低減できると主張している。
同社の防衛部門であるボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティーのスティーブ・パーカーCEOは声明で「2機種の先進戦闘機を並行して納入することは当初からの計画であり、それに応じて投資を行ってきた」と述べた。パーカー氏はボーイングの戦闘機プログラムのベテランであり、24年に防衛部門の暫定トップに就任した。
TDコーエンの防衛アナリスト、ローマン・シュバイツァー氏は、F47とF/A-XXには重要な違いがあるものの方向性は同じだと指摘。両機とも、中国との衝突を見据え、自律型ドローンとともに制空権を確立することを目的としているとの見方を示した。