宇宙から見たペンギンのふん。その色合いの変化が、南極大陸の環境と生態系の変化を示す新たな手がかりになる。
アデリーペンギンは南極海に最も多く生息する捕食動物の1種。主として海で獲物を捕らえるが、営巣するのは南極大陸各地の露出した岩場だ。
ペンギンはしばしば数十万羽もの大集団で暮らす。この集団が排泄する大量のふんは積み重なって固まり、グアノと呼ばれる堆積物となる。グアノは宇宙からでも見えるほど大規模で、NASAの地球観測衛星ランドサットの画像でも識別できる。
筆者が率いる学際的な調査チームは古くは1980年代までさかのぼる数千点の衛星画像を分析。アデリーベンギンが何を食べているかを突き止め、環境の変化がペンギンの食生活と生存に与える影響を明らかにした。
私たちの調査で、アデリーペンギンは営巣地の周辺に海氷が豊富にあれば、主に小ぶりの魚を食べることが分かった。海氷が少ないときはオキアミが主要な栄養源となる。
オキアミはピンク色の外骨格を持つ。ペンギンは外骨格を十分に消化できないから、オキアミを大量に食べると、排泄物がピンク色を帯びる。そのためグアノの色合いからペンギンの食物に占めるオキアミの割合を推定できる。
私たちはまず南極大陸の数カ所でグアノを採取した。そして分光計を使って、それらのグアノが衛星画像ではどう見えるかを確認。グアノの内容物を化学的に分析してペンギンが食べた物を調べた。
この情報といくつかの統計モデリングで、衛星画像のグアノの色合いを基にペンギンの食物に占めるオキアミの割合を推定する手法を確立できた。私たちの知る限り、衛星画像を基に野生動物の食性を調べた研究はこれが初めてだ。
私たちは約4000点の画像を分析。年ごと、季節ごと、営巣地ごとのアデリーペンギンの食性の違いを調べた。それにより気候変動がペンギンの食性、ひいては南極の食物網(複数の食物連鎖が網の目状に絡み合ったモデル)全体に及ぼす影響が見えてきた。
2010年代から南極大陸周辺の海氷は急速に減り、魚も減った。アデリーペンギンのヒナは通常、魚をたくさん食べれば体重が増え、成鳥になるまでの生存率も高くなる。
私たちの調査で栄養源をオキアミに頼っている集団は過去数十年に個体数が減少し、主に魚を食べている集団は個体数が安定しているか増えていることが分かった。
残念ながら、海氷は今後もどんどん減りそうだ。しかも魚とオキアミをめぐる争奪戦は激化している。南極半島周辺では、商業捕鯨の禁止でオキアミを大量に食べるヒゲクジラ類の個体数が大幅に回復。温暖化に伴いジェンツーペンギンなど亜南極の捕食者も南極に進出し始めた。おまけに、養殖魚の餌やサプリメント用にオキアミを捕獲する底引き網漁船もアデリーペンギンの栄養源を奪いかねない。
気候変動で野生動物の世界はどう変わるのか。人間はその変化にどう対応すべきなのか──。その謎を解く鍵は宇宙から見た地球の姿にある。今後も技術の進歩に伴い、衛星画像は重要な情報をもたらしてくれるだろう。
Reference
Youngflesh, C. et al., Space-based monitoring of penguin diet links sea ice, food webs, and population change, Current Biology (2026), DOI: 10.1016/j.cub.2026.06.028
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Casey Youngflesh, Assistant Professor of Biological Sciences, Clemson University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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