破壊的な抗議運動はフランス文明の矛盾ではなく、むしろ伝統だという見方もある。
それでも9月末から各地に広がった高校生の抗議デモは、お世辞にも好ましい光景ではない。全国の学校で放火が相次ぎ、SNSには衝撃的な映像が投稿された。若者たちに追い回され、倒れたところを蹴られる女性警官。放火を止めようとして殴られる白髪の教師。即席の火炎放射器で顔にやけどを負った女性……。
大量の移民と維持不可能な手厚い福祉が欧州を「文明の消滅」に追い込んでいると、トランプ米大統領は警告した。欧州は猛反発したが、その盟主を目指すフランスのこうした映像は、彼らの反論に説得力を与えるものではない。
タイミングもよくない。折しも欧州各国政府は、ロシアの脅威に立ち向かう覚悟があることを示そうとしているところだった。産業界は競争力に勝る中国に押され、イラン戦争によるエネルギー価格高騰の打撃を受けている。欧州は中東情勢からAIまで、世界の重要課題で影響力を保とうとしているが、AIでは米中両国に引き離されている。
こうした状況を考えれば、高校生の暴動は成人期を迎えつつある世代の新たな暴力騒ぎというだけの話ではない。限界まで負荷のかかった国家と欧州全体が直面する難題を浮き彫りにするものだ。
学校の環境や長い授業時間、教師不足などへの不満から始まった抗議活動は、政治的分断も深めている。学生を援護する側には次期大統領候補の1人、ジャンリュック・メランション率いる左派「不服従のフランス」の関係者もいる。メランションは政府の対応を「抑圧的」と批判した。