Rae Wee

[シンガポール 7日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は7日、エネルギー価格の高止まりや記録的な公的債務、人工知能(AI)投資ブームに伴うリスクが世界経済を脅かしていると警告し、各国政府に財政・金融政策による対策を講じるよう促した。

ゲオルギエワ氏は来週バンコクで開かれるIMF・世界銀行年次総会を前に講演し、世界経済には二つの相反する力が働いていると述べた。中東の紛争によるエネルギー供給へのマイナスのショックと、AIによる需要へのプラスのショックで、後者もインフレをあおっていると指摘した。

「この二つの力が及ぼす影響には世界各地で大きな差がある」と述べ、AIブームの恩恵が多くの国に届いていないとの見方を示した。

IMFの最新の世界経済見通しでは、戦争で甚大な被害を受けた国・地域の下方修正幅が最も大きくなると説明した。民間施設や経済インフラに大きな被害が出ているウクライナや、イランの攻撃とエネルギー輸出の急減に見舞われた湾岸諸国が含まれる。

ゲオルギエワ氏の講演原稿では、世界経済見通しで2026年の世界全体の成長率予測を変更するかどうかは示されなかった。

「湾岸での戦争が近く終わったとしても、エネルギー高の問題は当面続く公算が大きい」と予想し、北海ブレント原油先物は、27年を通じて原油価格が高水準にとどまることを示していると述べた。

エネルギー価格の上昇は、インフレ率や政策金利、指標国債利回りを押し上げており、米国、ドイツ、日本の10年物国債利回りはそれぞれ07年、09年、1996年以来の高水準に達し、なお上昇していると指摘した。

<増大する債務負担>

ゲオルギエワ氏は公的債務の増加についても総会で協議されると述べた。IMFによると、公的債務は第2次世界大戦後で最高水準にあり、30年までに国内総生産(GDP)比で100%を超える見通しだ。

債務負担については、米国を筆頭とする先進国が「最も問題が深刻だ」と指摘。債務のGDP比は新興国や低所得国を上回っていると述べた。政策当局はもはや、成長率の上昇だけに頼って財政問題を解決することはできないと強調した。

「それでも、債務の多い先進国では断固とした行動が見られない。今必要なのは、信頼できる中期的な財政再建計画だ。場合によっては、金融政策の負担をいくらか軽減するためにも、財政措置を前倒しで実施し計画を支える必要がある」と述べた。

「多くの国では今、金融政策で慎重ながらもタカ派寄りの姿勢を取るのが適切かもしれない」とし、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日銀による利上げは「極めて適切だ」と評価した。

<AIに多くのリスク>

ゲオルギエワ氏はAIに伴うリスクも指摘した。AI投資の対GDP比は、鉄道や送電網、通信インフラへの投資を上回る可能性が高いという。

経済・金融面でAIへの集中が進むにつれ、AI企業は高い企業価値を正当化するため、生産性と利益の向上を実現するよう迫られているとし、市場の失望が「広範囲に及ぶショック」に発展しかねないと警告した。

一方、IMFの研究では、AIを適切に活用すれば、世界の年間成長率を0.5%ポイント押し上げる可能性があると述べた。

AIへの備えが鍵になると強調。「労働市場への大規模な悪影響、サイバー面や安定性を巡る深刻なリスク、最先端のモデルが人間の制御を離れて暴走する恐れなど、AIに伴う重大な危険の管理に役立つ」規制上の歯止めも必要だと訴えた。

講演後の対談では、現在の環境で金融政策が担う「最も重要な役割」は物価安定に注力することであり、中央銀行は物価安定を維持する決意を伝える必要があると述べた。「それができるのは中銀が独立性を保ち、国債を買い入れて財政側の負担を軽減するよう求める財政側からの圧力に抵抗できる場合だけだ」と語った。

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