Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 29日 ロイター] - 臨時国会の召集が10月5日に迫る。高市早苗首相にとって最大の課題とされるのは、消費減税関連法案の審議だ。政府・与党内では公明党の協力に期待する声もあるが、複数の関係者は「簡単ではない」と漏らす。衆院での再可決という切り札はあるものの、特に参院の審議では不確実性も懸念される。
<「条件闘争に持ち込むのも難しい」>
「そもそも1本の法案として審議するのはおかしい」。9月上旬、消費減税を担当する省庁が公明の国会議員らに法案内容を説明した際、出席議員の一人はこう反発した。政府は来年4月からの飲食料品の消費減税と、その後に本格導入する所得に応じた支援金給付を一つにまとめた「消費税・支援金法案」を臨時国会に提出予定だ。この点に疑義が挟まれた。
公明は恒久的な消費減税を主張し、政府案については2年間限定であることや財源が明確になっていない点などを問題視する。一方で、給付制度の導入については一定の理解を示してきた経緯がある。前出の議員が「おかしい」としたのは、減税と給付を束ねた法案では賛成できないとの意向表明でもあった。公明関係者は財源論に加え、農業や漁業、外食業への支援策など制度の全容が不透明なままだとも指摘。「法案への賛否を検討する以前の問題だ」と述べた。別の関係者も「現時点で政府案に賛成するのは無理だ」と言い切った。
複数の政府関係者も、公明から賛成を取り付けるのは「簡単ではない」と口を揃える。そのうちの1人は「法案を一つにまとめること自体に反対されると、説得のしようがない」と話す。別の関係者は、そもそも連立離脱を選んだ公明が高市政権に協力する可能性は低いとし、「賛成のための条件闘争に持ち込むのも難しいのではないか」と語った。
<「いったい誰がその役割を担うのか」>
そうなれば、波乱含みなのが参院での審議だ。圧倒的多数を占める衆院と違い、自民党と日本維新の会は参院で少数与党の状態が続いている。公明が法案に反対するとなれば、他の野党や無所属議員の賛成を地道に積み上げるしかない。参院で野党第1党の立憲民主党関係者は「法案には反対することになるだろう。政府与党には徹底的に対抗する」と気を吐く。
衆院では2月の衆院選を前に結党された中道改革連合が、衆院選での大敗を経て9月に分裂し、旧立民系議員による新党と、公明党に復帰した旧公明系議員がそれぞれ袂を分かった。両者は国会で足並みをそろえる会派「中道」を結成している。複数の公明関係者は「中道」と参院の公明も法案賛否で統一行動をとるのが原則だと説明しており、与党にとっては公明を「一本釣り」する難しさも増す。
一方、参院自民の「変化」もにわかに法案の行方を左右しそうだ。先の内閣改造・党役員人事に合わせ、自民の松山政司参院議員会長は石井準一参院幹事長を交代させた。野党や衆院との調整力に定評があり、国会対策の経験も豊富な石井氏の交代には、与党内からも「参院での法案審議は野党とぎりぎりの調整が必要になる。いったい誰がその役割を担うのか」と案じる声が出ている。
<「準備や審議に丁寧に臨んでまいりたい」>
参院での審議が行き詰まった場合の「切り札」は衆院での再可決だ。憲法の規定では、衆院で可決された法案が参院で否決されるか、参院が受け取った後に採決に至らないまま、休会日を除いて60日が経過する「みなし否決」となれば、衆院で3分の2の賛成による再可決が可能となる。参院軽視との批判を招きかねない「禁じ手」でもあるが、複数の政府与党関係者は「高市氏は何がなんでも法案を成立させる考えだ」と語っている。
加えて、維新が注力する衆院の議員定数削減法案の審議も控える。同法案には自民内にも必要性を疑問視する意見が根強い。高市政権は会期末を12月12日と想定するが、政府内にはすでに「本当に会期内に収まるのか疑問だ。延長となれば来年度予算の編成作業に影響しかねない」と危惧する声も出ている。
法案成立に向け、政府は野党の協力をどう得る考えなのか。
木原稔官房長官は29日午前の記者会見でロイターの質問に、制度設計の過程で開かれてきた超党派の「社会保障国民会議」での議論に言及。物価高や社会保険料負担に苦しむ中低所得者の負担軽減を早期に図るべきとの方向性は、多くの部分で各党と共有できていると述べた。また、給付の実施についてもおおむね各党の了承を得たと強調。「各党の意見を十分に尊重しながら、なるべく多くの政党に賛同いただけるよう法案の準備や審議に丁寧に臨んでいきたい」と語った。
衆院での再可決については、「国会の運営は国会でお決めいただくべきことだ」とコメントを控えた。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)