Dawn Kopecki Nolan D. McCaskill
[ニューヨーク 27日 ロイター] - トランプ米大統領が率いる与党共和党は、従来は安全圏とみられていた選挙区が11月3日の選挙で接戦になる可能性が党内調査で示されたことを受け、これまで「安全圏」と見なされていた40近い下院選挙区に資金を投入している。事情に詳しい3人の情報筋が明らかにした。
この方針転換は、広告枠の予約状況や選挙資金報告書にも既に表れている。ロイターが主要な共和党系政治団体や大口献金者の支出を調査したところ、これらの団体や献金者が今月1日以降に少なくとも39選挙区で支出を開始したことが分かった。
これらの選挙区の多くは共和党の牙城で、世論調査でも依然として民主党の対立候補をリードしている。それでも中間選挙ではトランプ氏の政策に対する不満が噴出しかねないとの党指導部の懸念が、今回のてこ入れを図る動きから露呈した格好だ。
関係者2人によると、共和党の下院指導部は最近、数十選挙区の陣営に対し、世論調査で優勢で、2024年の前回大統領選ではトランプ氏が大差で勝利した選挙区であっても、勝利を確実視できないとの党内データを示して警告した。
超党派の広報会社ロック・ソリューションズのパートナーで、共和党のストラテジストを務めるロン・ボンジャン氏は「共和党は、これまで心配する必要がなかったはずのいくつかの地盤で守勢に回っている」と打ち明けた。
共和党は下院で218議席と、民主党の214議席に対して僅差で過半数を占めている。他に無所属議員1人が共和党と協調しており、2議席は空席となっている。民主党が下院で主導権を握るには、中間選挙で少なくとも4議席を純増する必要がある。
<巨額の選挙資金>
共和党指導部と協力している2人の党関係者は、民主党が攻勢を仕掛ける隙を与える前に、より大きな資金力を活用して封じ込めていると主張した。その上で、共和党の牙城となっている選挙区を確実に維持するために「保険」を掛けていると語った。
共和党全国委員会(RNC)のナタリー・バルダサーレ報道官は「共和党は有権者を投票所に動員し、候補者の勢いをさらに高めるために、巨額の選挙資金を投入している」とし、「私たちは決して油断していない。なぜならば民主党とは異なり、共和党は勝てる選挙で白旗を掲げるようなことはしないからだ」と訴えた。
顕著な例が、共和党のブライアン・ステイル下院議員を選出している中西部ウィスコンシン州の選挙区だ。前回大統領選ではトランプ氏が4.5ポイント差で勝利しており、クック・ポリティカル・レポートは情勢を「共和党優勢」と伝えている。それでも、保守系の資金集めと独立支出を行う政治団体 「スーパーPAC」は今月、ステイル氏の選挙戦に150万ドル(約2億3700万円)を投入した。今回の選挙戦では初めての資金投入で、ステイル氏の代理人はコメントを差し控えた。
ノースカロライナ州ローリー東方の第3選挙区では、共和党のグレゴリー・マーフィー下院議員が1週間前に保守系PACから13万1107ドルを受け取った。今回の選挙戦でマーフィー氏に対する外部からの資金提供は初めてのことだ。
これに対し、民主党は7月以降に同選挙区で32万6000ドル超を投じてきた。この選挙区は前回大統領選ではトランプ氏が14%ポイント差で勝利し、クック・ポリティカル・レポートは「共和党の堅い地盤」と評価している。マーフィー氏の事務所はコメント要請に応じなかった。
こうした共和党候補への緊急支援の背景には、厳しい現実がある。それはトランプ政権下でのガソリンやエネルギー、肥料価格の高騰が、共和党の牙城となってきた農村地帯の有権者に特に大きな打撃を与えているという実情だ。
共和党の下院選対策スタッフの1人は、ディーゼル用燃料価格の高騰が逆風となってアイオワ州やカンザス州などの中西部州での共和党候補者の選挙戦は「極めて厳しい」 と漏らす。
<民主党を上回る支出>
ロイターがスーパーPACの支出を分析したところ、選挙戦に向けたこれまでの総支出額は15億6000万ドル以上に到達。うち約4億9600万ドルはレイバーデー(9月第1月曜) である今月7日以降に投じられた。この金額には、寄付者を公表しない非営利団体の支出は含まれていない。
政治広告を追跡するアドインパクトによると、共和党は今後数週間の広告枠として少なくとも8億8800万ドルを確保しているのに対し、民主党は少なくとも6億6600万ドルにとどまっている。
連邦選挙委員会のデータによると、25日までの3週間に共和党寄りのスーパーPACは同党候補者に対して約3億0970万ドルを投じ、民主党候補の支援に投じられた1億7420万ドルの2倍近くを支出した。
共和党議会委員会の広報担当者マイク・マリネラ氏は「共和党は優勢にある。下院の民主党は、非常に限られた資源で必死に追いつこうとしている」と語った。
一方、民主党下院選挙委員会の広報担当者ビエト・シェルトン氏は、同党が資金面では不利な立場にあることを認めつつも、前回大統領選でトランプ氏が圧勝した選挙区に資金を投入する動きについて、「共和党はおびえており、米国民の支持を失ったことを自覚している。確実な敗北を回避するために資金を投じるという最後の賭けに出ている」と述べた。
前回大統領選でトランプ氏が約18%ポイント差を付けた南部テキサス州のモニカ・デラクルス下院議員の選挙区では今月5日以降、共和党のグループがテキストメッセージ、ダイレクトメール、デジタル広告に計約200万ドルを投入してきた。クック・ポリティカル・レポートは25日、デラクルス氏の選挙区について「共和党優勢」から「接戦」へ変更した。