Maria Martinez Rachel More
[ベルリン 28日 ロイター] - ドイツ産業界が、メルツ首相に対し、中国政府との協議で、不公正競争の問題で強硬な姿勢を取るよう圧力をかけている。ドイツはこれまで、中国の報復を恐れて強気に出ることをためらっていたが、安価な中国製品の流入に産業界は危機感を強めた。ドイツ政府の姿勢が転換すれば10月に中国との協議に臨む欧州連合(EU)の方針にも影響を及ぼす。
経済協力開発機構(OECD)が6月に公表した報告書によると、中国の製造業者はOECD加盟国の製造業企業に比べ、売上高比で3─8倍の国家支援を受けている。
ドイツにとって、中国は最大の貿易相手国。中国に対する貿易赤字は2025年、約220億ユーロ拡大し、893億ユーロ(1040億5000万ドル)となった。中国からドイツへの輸入が8.8%増加した一方、中国への輸出は9.7%減少した。
ドイツ商工会議所連合会(DIHK)の対外貿易責任者、フォルカー・トライヤー氏は「中国と何が起きているのかを議論する必要がある。それが補助金や不公正競争によるものだと確認されれば、問題となる」と述べた。
この懸念は、フォルクスワーゲンなどのドイツ自動車メーカーで特に切実だ。中国市場ではBYDなど現地ブランドに追い抜かれた上、現在では欧州市場でも中国勢との競争激化に直面している。
トライヤー氏は、世界貿易機関(WTO)やEUの枠組みには欧州産業を守るための十分な手段があると指摘。「行動を決断した際の意思決定プロセスを、単純に効率化し、短縮する必要がある」と述べた。
ドイツの主要製造業者を代表するドイツ産業連盟(BDI)は、中国製品は、政府補助金と、対ユーロで約15%過小評価されているとドイツ銀行が指摘する人民元安によって、ドイツ製品より30─40%価格を下げることが可能と試算。セーフガード(緊急輸入制限)を含む既存の通商政策措置のより迅速な適用、アンチダンピング・反補助金手続きにおける製品グループの一括処理などの手法上の調整を提唱している。ウォルフガング・ニーダーマーク理事は「中国のサプライヤーからの大きな価格圧力によって状況は深刻化している」と指摘。「中国による報復措置の可能性は戦略的検討に含めるべきだが、欧州の行動を決定づけたり、最終的に阻止したりするものであってはならない」と述べた。
ドイツの雇用の半分以上を担う中小企業の団体、ドイツ中小企業連盟のマティアス・ビアンキ氏は「企業は中国による報復の可能性を依然として懸念している。しかし今や、何もしないことも同様にリスクとなっている」と語った。
ロイターが入手した5月22日付の文書によると、フランス、イタリア、スペインなどが、EUに貿易防衛措置の見直しを求めている。
ドイツはこの取り組みには加わっていないが、関係者によると、メルツ氏は10月のEU・中国協議が決裂した場合に備え、EUが対策パッケージを準備することを支持する意向を示したという。
メルツ政権は対中発言のトーンを強めているが、脱中国依存を訴える一方で、中国が引き続き重要な経済パートナーだと述べるなど、一貫性に欠ける。
メルツ氏は26日、連立与党内の意見対立を受け、EUと中国の貿易不均衡に対処する提案策定を閣僚に指示したと明らかにし、「ドイツ産業界も、こうした世界的な不均衡について明らかに考えを改めたことに留意している」と述べた。