なぜ「気づけばスマホを触っている」のか

注目すべきは、スマホが「気づけば触ってしまう」存在となる背後には、私たちの心の癖を巧みに利用したアプリの設計があるという指摘だ。単なるユーザーでしかない私たちも、それを“なんとなく感じていた”のではないだろうか。

なお、アプリデザインに関係する心の癖は、「習慣形成」「フロー体験」「認知バイアス」の3種に大別されるという。それぞれを確認してみよう。

LINEでのやりとり、Instagramでの写真共有、Spotifyでの音楽視聴など、私たちはさまざまなアプリを無料で利用できる。ただしアプリの提供者も収益を上げなければならないため、ビジネスモデルを用意する必要がある。

有料ダウンロード、広告収入、定額課金(サブスク)などがそれにあたる。そして、そういった収益機会を活かすためには、アプリ利用の「データ」が重要な意味を持つ。

 たとえば、SNSは、ネットワーク上の行動を遍く収集、多種多様なエンゲージメントを惹起することで、どのようなコンテンツをいかに、どのタイミングで表示すると関心を引き、購買に結びつきやすいかを分析します。そして、提供する製品・サービスの価値、広告媒体としての価値、商取引導線としての価値を高めるため、機能、デザインを絶えず進化させようとするのです。(64ページより)

したがってアプリの提供者は、“有力な情報”として機能する“利用者の習慣”を知らなければならない。そのため、さまざまな手法でネットワークに誘い、長く滞留させる必要があるのだ。

次に、フックモデルの「可変報酬」に関する理論として、アプリ開発で重要な役割を果たしているのが「フロー」理論だという。フローとは、時間の感覚を失うほど、ある行為に完全に没入するような状態を指す。ゲームに夢中になって、気づいたら数時間が経過していたというような状態だ。

 フロー体験は、その行為自体が目的(自己目的的)であり、内的報酬が得られるものであることがまず必須です。そして、行為には、必要とされる要求とその要求に応えるスキルとのバランスが重要であり、困難でありながら、克服すると達成感が得られる、要求とスキルの関係性が求められます。さらに、何が要求され、それにどう応えているか、進捗を直観的に把握し、意識せずとも状況をコントロールできていると感じられるフィードバックが重要となります。(69ページより)

そうした要素が満たされ、集中できたり、時間感覚が失われて自己意識が薄れ、行動そのものが報酬になる――やっていて楽しい――状態がフロー体験であるということだ。日常的に意識する機会は少ないかもしれないが、これは大いに納得できることではないだろうか。

スマホが利用する「認知バイアス」
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