John Geddie Yukiko Toyoda Ben Blanchard Aftab Ahmed
[東京/台北/ニューデリー 24日 ロイター] - トランプ米大統領が、長年の同盟国である韓国に負担を強いる形で北朝鮮の金正恩総書記に歩み寄る姿勢を示した。これは日本からインドに至るまで、多くのパートナー国が米国はどこまで信頼できるのかを改めて見極めようとしているという、米国にとって安全保障上の重要な局面で起きた出来事だ。
政府関係者や安全保障専門家の話では、トランプ氏が先週、韓国との合同軍事演習の縮小を突然決定して「北朝鮮に対して敵対的だ」と説明したことは、地域の平和を長年支えてきた同盟関係に亀裂が生じるのではないかとの懸念を強めた。
日本では、今後予定される難しい安全保障交渉の中で、自国もトランプ氏の標的になりかねないとの不安が広がっている。台湾は、来月予定されているトランプ氏と中国の習近平国家主席との首脳会談を慎重に見守っているほか、インドでも米国の戦略における自国の位置付けへの確信が揺らぎつつある。
政治リスク分析会社ユーラシア・グループのシニアアナリストで、元米外交官のジェレミー・チャン氏は「今回の(トランプ氏による米韓合同軍事演習縮小の)決定は、米国の安全保障上のコミットメントに対する地域の疑念をさらに強めるだろう」と述べた。
不安材料はそれだけではない。韓国政府は24日、来月予定されていた別の米韓軍事演習も中止されたと明らかにした。米国側は、イランとの戦争に伴う軍事力の制約を理由に挙げている。
ホワイトハウス高官の1人は、トランプ氏は同盟国がイランとの戦争を十分に支援しなかったことに不満を抱いており、多くの同盟国が自国防衛のためにさらなる負担を負うべきだとの考えを明確にしている、と説明した。
米韓協議に詳しい関係者によると、トランプ氏は北朝鮮との対話再開を強く望んでおり、支持率が低迷するイラン戦争への批判をかわすため、外交分野で成果を上げたいと考えているという。
<日本で高まる警戒感>
トランプ氏の金正恩朝鮮労働党総書記への会談呼びかけは、これまでのところ北朝鮮から冷淡な反応しか得られておらず、結果として核保有国である北朝鮮を勢いづかせる恐れがある。
自民党有力議員の1人、小野寺五典元防衛相は20日のBSフジの報道番組で、こうした展開について日本としては「非常に困る」と述べた。トランプ氏の融和姿勢にもかかわらず、北朝鮮は同日、日本海に向けて複数の弾道ミサイルを発射し、韓国と日本で警戒が強まった。
ただ、日本側がより懸念しているのは、在日米軍駐留経費の日本側負担を巡る交渉におけるトランプ氏の対応だ。ある日本政府高官は、トランプ氏が予告なく大幅な負担増を求める可能性があり、それは日本国内で政治的に受け入れがたいものとなりかねないと語った。
複数の専門家は、10月に予定されている日米共同演習「キーン・ソード」が交渉材料として利用される展開もあり得るとみている。日米両政府の関係者は現時点で演習縮小は予想していないと説明しているが、トランプ氏がいつ方針変更するか分からないと警戒もしている。
キーン・ソードは、米軍の装備や人員がイラン情勢への対応に振り向けられているという面から、2024年実施時より規模が縮小されてもおかしくない。実際、米海軍でアジアに前方展開する唯一の原子力空母「ジョージ・ワシントン」が、中東で活動する空母「エーブラハム・リンカーン」支援のため中東へ向かったことは、中国に対する米国の抑止力が弱まるのではないかとの懸念を呼んでいる。
それでも、今月アジアを訪問した米国防総省のコルビー政策担当次官は、日本からフィリピンへ連なる「第1列島線」における戦闘即応態勢の確保は依然として米国の重要課題だと強調した。
<台湾は米中首脳会談注視>
中国による軍事的圧力への懸念が最も強いのは台湾だ。トランプ氏は、中国との良好な関係と脆弱な貿易休戦状態を維持するため、総額140億ドル規模の台湾向け武器売却計画の承認を保留している。
来月ワシントンで予定される米中首脳会談を前に、台湾当局者らは、米国が少なくとも武器売却案件を小分けにし、中国を過度に刺激しない形で進めるのではないかと予想する。
一方、台湾国防部系シンクタンク「国防安全研究院」の研究者は、トランプ氏の発言と実際の米国の行動には違いがあると指摘。情報共有、軍事訓練、哨戒活動など、台湾に対する米国の支援は依然として相当な規模で続いていると分析している。
実際、米海軍機は21日に台湾海峡上空を通過。米国はこれについて「自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントを示すものだ」と説明している。
<インドでも信頼に揺らぎ>
トランプ氏の最近の動きはインドにも衝撃を与えている。複数の安全保障専門家から聞こえてくるのは、米国がロシアと中国への対抗軸として長年進めてきたインドとの関係強化の成果を、自ら損なう恐れがあるとの見方だ。
さらに6月には、米国防総省が「インド太平洋軍司令部」の名称を「太平洋軍司令部」に戻した。これに関して一部の専門家は、インドの戦略的重要性が低下した兆候ではないかと受け止めている。
国防総省はその見方を否定するが、トランプ氏がインド製品に高関税措置を導入したり、インド・パキスタン停戦を仲介したと繰り返し主張したりしていることは、既にインド側の不満を高めていた。
事情に詳しいインド側関係者2人によると、インド政府は現在、米国との長期的な防衛契約に慎重な姿勢を強めているという。
紛争監視団体「武力紛争位置・事象データプロジェクト(ACLED)」のシニアアナリスト、パール・パンディア氏は「今回の決定で、トランプ氏の取引重視の外交姿勢が一層裏付けられた。同盟国であっても、個別政策を巡る意見の相違が、二国間関係全体にコストをもたらし得ることを示している」と述べた。