唾液には、病気の見えない兆候を知る手がかりが含まれているかもしれない。口内の細菌が、2種類のがんに関連するパターンを示す可能性があることが新たな研究で明らかになった。
研究チームによると今回の発見は将来的に、体への負担が少ない「口をゆすぐだけ」というスクリーニング検査につながる可能性があるという。
学術誌『セル・ホスト&マイクロブ』に掲載されたこの研究では、口腔内と消化管内に生息する微生物の関連性を調査した。その結果、口腔内と消化管内の微生物の構成パターンは健康状態によって異なることが判明し、口腔サンプルを用いた将来的な疾患スクリーニングの可能性が示された。
特に明確なシグナルが確認されたのは、世界で特に多い消化器がんである、胃がんと大腸がんだった。
米がん協会の推計では、2026年の新規罹患者数は胃がんで約3万1510人、大腸がんで約10万8860人に上るとされている。
論文の筆頭著者である韓国の延世大学のキム・ジヒョンは、「口内細菌の多くは腸内にも存在し、そこで増殖することがある。そこで、がん患者の消化管内では口内細菌の到達や定着の仕方が異なるのではないかと考えた」と述べている。
研究チームは検証のため、ボランティア507人から口腔サンプルと便サンプルを採取した。
対象者の内訳は、健康な人129人、メタボリック症候群、高血圧、高脂血症、2型糖尿病などの代謝性疾患を抱える人215人、胃がん患者77人、大腸がん患者86人。なお、がん患者からのサンプル採取は、治療を開始する前に行われた。
研究チームは遺伝子配列解析を用いて「口腔・糞便(MF)指数」という指標を独自に作成した。これは、同一の微生物の変異体が口内と腸内でどの程度共有されているかを測定するものだ。その上で、このMF指数によってがん患者と健康な人を判別できるかどうかを検証した。