(本文の体裁を整えて再送します)
Karen Brettell
[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米財務省が残存期間の長い旧発債の買い入れ消却(バイバック)拡大を打ち出したことで、外国為替市場では、なじみ深い懸念が再燃した。「もし米政府が金利上昇を容認しないのなら、代わりにドルがその調整を吸収することになるのではないか」だ。
米財務省は19日、バイバックの1回当たりの規模を期間限定で20億ドルから少なくとも40億ドルに倍増すると発表した。対象は、6月下旬以降に激しい売りを浴びている長期債。翌20日、ベセント財務長官は、1回当たりの規模が40億ドルを超える可能性があると述べた。直近の売りについて市場は「少し先走りすぎた」との認識も示した。
米国がこの手法を用いるのは今回が初めてではない。財務省は2024年、取引が薄い旧発債の流動性管理ツールとしてバイバックを復活させた。しかし、今回は、発表が通常の四半期ごとの定例入札計画とは別で、20年債入札の直前だったことから、長期金利への上昇圧力を和らげる狙いとの見方が一部で出た。
米長期金利は、財政見通しの悪化、大量の国債発行、地政学的リスク、米連邦準備理事会(FRB)の政策軌道を巡る不確実性を背景に上昇している。今週、30年債利回りは07年以来の高水準を付けた。その翌日には公的債務残高が40兆ドルを突破した。
今、焦点になっているのは、政策担当者が長期債利回りが高くなることを容認するのか、それとも最終的にドル下押し圧力となり得る措置に傾斜するのかだ。後者の場合、米国債の投資妙味が低下し、関連する投資資金の流入が制限され、ドル売りにつながる。
スコシアバンクのチーフFXストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「代償を払う必要がある。利回り上昇という形か、米ドルの譲歩(下落)を引き出すことになるかのどちらかだ」と指摘した。
<ツイストオペほうふつ>
一部の投資家は、財務省の動きに通貨価値低下の兆しを見いだしている。懸念されているのは、中央銀行が政府支出を賄うために紙幣を増刷するようなあからさまな財政ファイナンスではない。債務返済コストの上昇に直面する当局が、買い入れや短期債の発行、あるいは民間投資家が吸収しなければならないデュレーションを減らすような同様の手法を通じて、利回りが市場の需給均衡水準に達するのを防ごうとする可能性があるということだ。
この場合、調整は消滅するのではなく転嫁される。金利が抑制されれば、代わりにドルが下落する可能性がある。19日の財務省による想定外の発表後、金が3%超上昇し、暗号資産(仮想通貨)のビットコインが2日間で13%急騰するなど、最大級の値上がりを記録した理由の一部もここにある。
ドイツ銀行のストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏は、この効果をFRBが2011─12年に実施した「オペレーション・ツイスト(ツイスト・オペ)」に例えた。これは、短期債を売り長期債を買い入れることで、短長期金利の差を示すイールドカーブ(利回り曲線)をフラット化させたものだ。同氏は、買い入れに加え、外国の中央銀行に米国債の直接売却ではなくFRBのレポファシリティーの利用を促すことは、長期金利を低く抑えるための「緩やかな金融抑圧」だと述べた。
誰もがこれを決定的な転換と見ているわけではない。CIBCキャピタル・マーケッツのFX戦略部門トップ、サラ・イン氏は、過去のドル逼迫局面の「ミニ」版と呼び、25年4月の「解放の日」の売りや今年1月の圧力よりも穏やかだとの見方を示した。イン氏によると、市場が米政府の決意を試しているというより、その逆のように見えるという。「実際にはベセント氏が市場を試しており、その後市場が反撃している」と述べた。
<その場しのぎの対応に信頼の危機>
そのタイミングは政治的な臆測も呼んでいる。中間選挙が近づく中、長期金利、特に住宅ローン金利の低下は、トランプ米政権にとって政治的な追い風となる。オズボーン氏は「ガソリン価格は依然として高く、住宅ローン金利も上昇している。中間選挙が間近に迫る中、これらは政権が対処したい問題かもしれない」と指摘した。
それでも、財務省が対処できる余地は限られている。状況を緩和しようと無理をすれば、インフレが再燃し、FRBにタカ派な対応を強いるリスクがある。イン氏は「中間選挙に向けたFRBの利上げは、最良のシナリオには見えない」と述べた。
スタンダードチャータード銀行のG10FXリサーチおよび北米マクロ戦略のグローバルヘッド、スティーブ・イングランダー氏は、投資家を不安にさせているのは、財政的な問題よりも、ベセント氏が流動性の低い市場の一角への介入を通じてその場しのぎの対応をしているという印象で、こうした戦術は「パニック的な反応」のように見えかねず、多用すれば信頼を失う恐れがあると指摘する。
ただ、米国の力強い生産性や企業収益の伸びなど、比較的高い利回りと経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)によって最終的にドルは支えられるとみる。今回の措置で「経済の生産性という良いファンダメンタルズが変わるわけではない。赤字という悪いファンダメンタルズが変わるわけでもない」と語った。