Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 17日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領による13日の択捉島訪問を受け、日本政府は対抗措置の検討を続けている。外務省幹部は17日、ロイターなどの取材に「日本の国益と国際情勢を見極めて適切に対応する」と述べた。ただ、現時点で対応が明確に定まっているわけではない。背景には、ロシアからのエネルギー供給を維持したい思惑と、米国とロシアの関係に配慮する外交的立場がにじむ。

<「まったく把握できていなかった」>

政府にとってプーチン氏の択捉島訪問は寝耳に水だった。13日、外務省幹部は慌ただしく首相官邸を訪れ、高市早苗首相に状況を報告した。同日午後には高市氏が自ら記者団の取材に応じ、「日本国内の対ロ感情を一層厳しくし、中長期的な関係回復を困難にしたと言わざるを得ない」と、プーチン氏を強い口調で非難した。

高市氏は記者団からプーチン氏の訪問を把握したのはいつかと問われ、「事実確認を行っていた。私に連絡があったのは今日(13日)の午後だ」とも述べた。ロシア側の動きを事前につかみ切れていなかった状況を露呈したものだ。

実際、事情を知る政府関係者は「政府はプーチン氏の動きをまったく把握できていなかった」と認めた。なぜこのタイミングでの訪問だったのかについて複数の関係者は、ロシア国内向けのアピールや中国と連携した日本への揺さぶりといった「仮説」を立てつつ、最終的には「わからない」と口をそろえている。

<「サハリン2は聖域」>

その後、政府内に目立った動きは乏しい。外務省では17日午前、幹部間の協議が開かれたものの、出席者の一人は「対抗措置について決まったことはない」と明かした。夏季休暇の期間中で木原稔官房長官による定例会見も21日までは休止となっており、政府からの発信は滞っているのが現状だ。

対抗措置の方向性が定まり切っていない背景には、主に二つの事情があるとみられる。一つは、日本が液化天然ガス(LNG)などを輸入する、ロシア極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の存在だ。

日本のLNG輸入量のうち、ロシア産は1割程度を占め、政府内ではもともと日ロ関係がどんなに悪化しようともサハリン2は「聖域」と呼ばれてきた。加えて、米国とイスラエルによるイラン攻撃後、ホルムズ海峡情勢が不安定化し、日本はエネルギー不足の危機に直面。ロシアからの原油輸入も拡大傾向にある。対抗措置の実施によってロシアからのエネルギー供給に支障が出れば、国民生活への影響は避けられないというわけだ。

また、政府内には米ロ関係への配慮が必要になるとの声も漏れる。時期によって濃淡はあるものの、トランプ米大統領がプーチン氏との良好な関係構築を模索してきた経緯もある。日ロ関係の更なる悪化は、米が描く対ロ政策にも影響を与えかねない。日本が対抗措置を実行する場合、米への「根回し」が必要になるとの見方は、政府内では大勢だ。

<「大使帰国は効果薄い」>

とはいえ、高市氏が認めるように国内の対ロ感情は厳しさを増すと予想される。対応が弱腰と映れば、政権が支持を失う事態にもなりかねない。2010年11月にメドベージェフ大統領(当時)が国後島を訪問した際には、直後に駐ロ大使が一時帰国している。

政府内には、今回も大使の帰国や経済制裁の強化があり得るとの見方もあるが、前出の外務省幹部は「必要な対抗措置は実行するが、いつやるかは何とも言えない」と説明。プーチン氏による訪問当日こそ政府内に緊張が走ったものの、その後は事態が刻一刻と動いているわけではないとも述べた。

前出の政府関係者は「エネルギーを豊富に持っているのはロシアだ」と指摘。そのため、仮に日本が大使の帰国というカードを切ったとしても効果は薄いとの認識を示した上で、事態が長引くようであれば現在の大使の交代時期に合わせ「後任を出さない可能性はある」と語った。国内世論やエネルギー事情、そして米への配慮など、高市政権は再び難しい舵取りを迫られている。

北方領土(ロシア名:クリル諸島)は日本が領有権を主張し、ロシアが実効支配している。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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