[ニューヨーク 14日 ロイター] - 米クオンツ取引大手ジェーン・ストリートが、人工知能(AI)関連ヘッジファンド「シチュエーショナル・アウェアネス」への投資やテクノロジー株へのエクスポージャーにより、7月に約150億ドルの損失を計上した。事情に詳しい関係者2人の話と、ロイターが確認した社内メモで明らかになった。
2000年設立のジェーン・ストリートは、クオンツ分析に基づいて世界各地の取引所や取引プラットフォームで、上場投資信託(ETF)、株式、債券、オプション、商品、為替など幅広い金融商品を自己勘定で売買するとともに、市場に流動性を提供して値動きを円滑化させるマーケットメーク業務を手がける。従業員数は約3500人。
シチュエーショナル・アウェアネスは元オープンAI研究者のレオポルド・アッシェンブレナー氏が運営するAI特化型ヘッジファンド。7月にはAI関連株の下落によって発生した追加証拠金差し入れ請求(マージンコール)の影響を受け、保有株式の大半をケン・グリフィン氏率いるシタデルに売却した。同ファンドにはジェーン・ストリートも出資している。
ロイターが確認した14日付の社内メモで、ジェーン・ストリートの経営陣は「7月は厳しい月だった」と説明。シチュエーショナル・アウェアネスの大幅な評価損が、同月の業績悪化の一因になったとの認識を示した。
メモには「当社は外部運用のAI特化型ヘッジファンドであるシチュエーショナル・アウェアネスに投資している。同ファンドは上半期の好成績を背景に規模が拡大したが、大幅な損失を被った結果、当社の持ち分は年初来ではほぼ横ばいとなった。ただ投資開始以来では依然として利益を確保している」と記されている。
また「当社が最も懸念するのは急激な下落であり、そのような局面に備えて通常はプットオプションを購入している。しかしAI関連株の下落は7月を通じて徐々に進行したため、短期的なヘッジはほとんど効果を発揮しなかった」との説明があった。
さらに同社は、アジアの非AI関連銘柄のロングポジションでも損失を被った。これらの銘柄は年初から市場平均を上回るパフォーマンスを示していた。
メモは「第2・四半期に好成績を上げたポートフォリオとほぼ同じ取引で損失を計上した。AI関連銘柄は7月に大きく下落し、主要なメモリー半導体株の一部は約50%下落した」としている。
ジェーン・ストリートはコメント要請に応じていない。
今回の開示は、AI関連株の急落がウォール街の主要金融機関に与えた打撃の大きさを浮き彫りにした。7月の損失により、ジェーン・ストリートは2016年以来初めて月間トレーディング収益がマイナスとなり、収益は6月末のピーク時から約25%減少したという。
同社はこれまで外部資本を受け入れておらず、現在は世界200超の取引市場に直接アクセスできる体制を持つ。こうした資本構造により、流動性供給のために大きなポジションを保有し、そのリスクが収益につながる局面まで維持することが可能だ。
過去数年でジェーン・ストリートはマーケットメーク業務の大手へと成長。25年にわたり蓄積したデータと調査を活用して構築したリアルタイム価格分析ツールが競争優位の源泉となっている。
それでも同社もAI関連取引の逆回転の影響を免れることはできず、7月の損失を受けてここ数週間で最もリスクの高いポジションの一部を解消し、社内メモでもその事実を認めている。
メモは「年初来でトレーディング資本は大幅に増加しているものの、直近の損失を受けて、当面はリスク選好をより慎重にしている。7月に損失を計上した分野のリスクのかなりの部分を削減したほか、他の戦略でもリスクテークを抑制している。現在のポジションは当社のリスク許容度に照らして適切な水準にある。市場取引量は引き続き高水準で推移しており、短期売買戦略も改善が進んでいるため、トレーディング収益性はこれまで以上に高まっている」と強調した。