Marc Jones

[ロンドン 6日 ロイター] - MCPエマージング・マーケッツのベテランファンドマネジャーとして新興市場投資を手がけるカルロス・フォン・ハルデンベルク氏は数年前に、ほぼ全ての銀行の調査レポートが米ハイテク株の急騰をこぞって取り上げる中、投資家の関心をそれ以外の分野に向けさせるのに苦労していた。しかし状況は一変した。

人工知能(AI)ブームを背景に、高性能メモリー半導体で世界市場をリードする韓国・台湾企業の株価が急伸。今年は新興国株指数も米ウォール街の影から抜け出し、存在感を高めている。

2018年に著名な新興国株強気派マーク・モビアス氏とともにMCPエマージング・マーケッツを設立したハルデンベルク氏は、「投資家は米国と『マグニフィセントセブン』にしか関心がないと言っていた。それだけで十分な成果が出ていたからだ」と振り返る。「しかし今年は全てが逆転した」という。

もっとも、AIブーム便乗は代償も伴う。6月下旬以降、市場で激しい値動きが続いているのだ。

韓国総合株価指数(KOSPI)は、サムスン電子とSKハイニックスの大幅高を追い風に、それまでに約2倍まで上昇していたが、6月下旬以降は種々の懸念材料などを背景に、わずか6週間で約40%も下落。新興国株の中で時価総額が最大の台湾積体電路製造(TSMC)も約14%下げた。

こうした値動きを受けて韓国市場のボラティリティーは急上昇。24カ国・1175銘柄超で構成されるMSCI新興国指数のボラティリティーも新型コロナウイルス禍時の水準を上回った。

BNPパリバのアジア太平洋地域現物株リサーチ責任者ウィリアム・ブラットン氏は、「機関投資家の顧客は今の韓国市場の変動の大きさに苦慮している」と指摘。その上で「われわれは企業の収益には本質的に前向きな材料があると考えているが、市場参加者は、そのような好材料があったとしても、現時点ではそれに注目したり投資したりする価値はないと考えている」と述べた。

<望みがかなった結果>

韓国と台湾は、海外投資家にとって通貨取引が容易ではないという技術的理由から、MSCIでは依然として新興国市場に分類されている。一部の市場関係者は、最近の混乱によって、新興国市場にもマグニフィセントセブンのような熱狂が欲しいと願ってきたことが「願いが叶うと必ずしも良い結果にならない」という典型例になりかねないと懸念している。

現在、台湾・韓国の大手テック企業と、中国のアリババ、テンセントなどわずか9社でMSCI新興国指数の40%超を占める。これは米国株指数以上の集中度だ。

今年の韓国株式市場は、ビットコイン以上に値動きが激しい。また、最近の相場急落でMSCI新興国指数の「流動性ファクター」が過去最大の落ち込みを記録した。これは、これまで大きく上昇していた銘柄から投資家が一斉に資金を引き揚げたためだと、MSCIの最高調査責任者は説明している。

MSCIの調査部門を率いるアシュリー・レスター氏は、「かつて新興国市場は分散投資先として見なされていた。しかし、AI関連、特にAIハードウエア企業は存在感が極めて大きくなり、もはや十分な分散効果を提供していない。こうした企業はAIブームのど真ん中にいる」と話した。

<ボラティリティーを受け入れる>

欧州資産運用大手アムンディのポートフォリオマネジャー、ジ・ヨン・パーク氏は、市場の混乱が始まる前から保有比率を一部引き下げていたが、下落の影響は避けられなかった。「この1カ月で韓国市場では6回か7回のサーキットブレーカーが発動された。それだけ変動が激しいということだ」という。「私は5年間保有する前提で株を買う。夜ぐっすり眠りたい」とし、過度な値動きには慎重な姿勢を示した。

UBPのテクノロジー担当ポートフォリオマネジャー、ディミトリ・カリアニオティス氏によると、一部の富裕層顧客も市場急変に動揺しているが、同氏は冷静な対応を呼びかけている。

LSEGのデータによると、株価上昇が急激すぎたことを背景に、海外投資家は上半期の中国を除くアジア株市場からの資金流出ペースが、少なくとも2010年以降で最速となった。

JPモルガンによると、韓国と台湾が今回の調整で最も大きな影響を受け、資金流出額はそれぞれ1000億ドル超と440億ドルに達した。背景には、ファンドが単一銘柄に資金を集中させすぎないようにする運用上の制約があり、投資家がサムスン電子やSKハイニックスの大幅な値上がりを受けて利益確定売りを進めたことがある。両銘柄は過去1年でそれぞれ約500%、約1100%値上がりしていた。

カリアニオティス氏は「ボラティリティーを受け入れ、過熱している銘柄を避けるべきだ」としつつ、「嵐の日に市場にいなければ、反発局面にも立ち会えない」と強気の姿勢を崩さなかった。

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