Leika Kihara

[東京 5日 ロイター] - ベセント米財務長官が日本の金融政策について公に発言したことで、日銀は9月の金融政策決定会合で利上げに踏み切らざるを得ない状況に追い込まれたとの見方が広がっている。同時に浮上したのが、いったい米国は日本の国内政策にどこまで影響力を及ぼしているのかという疑問だ。

ベセント氏は円を支えるために日米両国が協調して実施した為替介入以降、積極的にメディア対応を行い、異例の協調介入が日本経済にとって必要な成功事例だと持ち上げた。

ただベセント氏の考えでは、介入だけでは十分ではない。市場が抱く「日銀はインフレ対応で後手に回っているのではないか」という懸念を払しょくするためには、利上げが必要だというのが同氏の立場だ。背景には、こうした懸念が日本国債利回りの上昇を招いており、その影響が上昇傾向にある米国債利回りにも波及しかねないという事情がある。

そのような考え方自体は、追加利上げの必要性を認識している日銀の基本的な見解と一致する。ただ、米国からの圧力が日本の政策決定に影響を及ぼす前例となることを懸念する声も聞かれる。

元日銀理事で、現在はみずほ総合研究所でエグゼクティブエコノミストを務める門間一夫氏は、今回の協調介入によって日銀は利上げを行いやすい環境を得たものの、それには代償も伴うと指摘する。「為替介入は基本的には時間を稼ぐ戦術であり、日銀の利上げによるフォローアップがなけ​れば無駄になってしまうリスクがある」と述べた上で「今回の介入に米国も関与したという事実はきわめて重い。(中略)政府が日銀の利上げを妨害すれば、米国に対する裏切り行為​になる。」と付け加えた。

日本の法律は中央銀行の政治的独立性を保障している一方で、政府の経済政策との緊密な連携も求めている。また日銀はこれまでも、急激な円相場の変動など外部ショックに対応するため、金融政策を通じた対応を求める政治的圧力を受けてきた経緯がある。

<緊密な協議>

今回の協調介入は、ひとまず効果を発揮しているようだ。日本単独による過去の介入と比べても、円相場をより持続的に支える結果につながっている。

こうした中でベセント氏はNHKのインタビューで、日銀の植田和男総裁が円安に苦しむ日本経済にとって最善の措置を講じると確信して​いると述べた。またCNBCのインタビューでは、円が大幅に過小評価されているとの認識を示すとともに、介入の後には「政策と経済の基礎条件による対応が必要だ」と発言して、日本に追加的な政策対応を促した。

ベセント氏は「われわれは日本側との協議を通じて、円相場をより正常な均衡水準へ戻すための適切な政策が今後も(日本側によって)実施されると考えている」と語った。

日銀は7月31日に終わった会合で政策金利の据え置きを決定したものの、物価上振れリスクへの警戒感をこれまでで最も強く示した。これにより早ければ9月にも利上げを実施する余地を残したとの受け止めが広がっている。

市場関係者の注目は、ベセント氏が8月末に開催される米国主催の20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議の場で植田氏と会談すると明らかにした点に集まっている。

日銀の動向に詳しい関係者の1人は「日銀が示したタカ派的な姿勢を踏まえると、利上げは9月か10月のいずれかになるのは明らかだ」と述べた。

別の関係者は「もしベセント氏と植田氏の会談が実現すれば、日銀が9月の利上げを見送ることは極めて難しくなるだろう」と指摘した。

また日銀の氷見野良三副総裁は8月27日に講演を予定しており、その内容が9月利上げの可能性を探る重要な手掛かりになるとみられている。

さらに別の関係者は「日銀内部で次回利上げの時期について確固たる意見が固まっているわけではないだろう。ただし、9月利上げを目指すなら事前に何らかのシグナルを発する必要がある」と語った。

木原稔官房長官は5日の記者会見でベセント氏の発言へのコメントを避けて「具体的な金融政策の手段については日銀が判断する事項だ」と述べた。

<四半期に1回ペースも>

日銀は2024年に長年続けてきた大規模金融緩和策を終了し、その後複数回の利上げを実施。直近では6月に政策金利を1%へ引き上げ、31年ぶりの高水準とした。

だが利上げペースは緩やかで、日米金利差が依然として大きいことから、円相場が約40年ぶりの安値圏まで下落する一因になったと指摘されている。

円安は輸入物価を押し上げるほか、中東情勢の緊迫化による燃料価格上昇とも相まって、家計の生活コストを押し上げているため、政策当局にとって大きな課題だ。

日銀が次にいつ利上げを行うかは、市場が将来の利上げペースや最終的な金利水準をどう予想するかに大きく影響する。

ロイターの調査では、大半のエコノミストが日銀は12月までに追加利上げを実施すると予想しており、その時期については10月との見方も少なくない。

一部のアナリストは、10月ではなく9月に利上げを実施した場合、市場は日銀が現在の「年2回程度」ではなく「四半期ごとに1回」のペースで利上げを進めるとの観測を強めてもおかしくないと話す。

JPモルガン証券のチーフエコノミスト、藤田亜矢子氏は「日銀は確かに9月利上げの可能性を示唆したが、これまでの利上げが経済に与えた影響を見極めるためにも、恐らく実際には10月まで待ちたいと考えているだろう」と分析する。

藤田氏は「もし9月に利上げを行えば、12月の会合も追加利上げの候補時期として強く意識されることになる。これは高市政権にとって必ずしも望ましい展開ではないのではないか」と述べ、最終的なタイミングは円相場の動向次第になるとの見方を示した。

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