Rie Ishiguro
[東京 16日 ロイター] - 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の293兆円に上る運用資産の行方に注目が集まっている。巨額の資金を動かすことから「資本市場のクジラ」として知られるGPIFの運用方針を巡り、片山さつき金融相が国内金融資産への投資拡大を促す施策を検討する考えを示し、上野賢一郎厚生労働相も資産構成見直しの可能性に含みを持たせた 。
<運用資産は世界最大級>
公的年金を運用するGPIFの運用資産額は2025年度末時点で293兆円(約1兆8100億ドル)と、北海油田などの石油・ガス収入を原資とするノルウェー政府年金基金の約2兆1000億ドルと肩を並べ世界最大級。韓国国民年金公団の1兆1200億ドル、米国最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)の約6371億ドルを大幅に上回っている。
25年度から5年間の基本資産構成割合(ポートフォリオ)は国内外の債券、株式にそれぞれ25%ずつ投資すると定めており、今年3月末の保有比率は国内債券26.91%、外国債券24.48%、国内株式23.81%、外国株式24.80%だった。金額では国内債券の保有残高が80兆円超、外国債券は73兆円超だった。
自主運用を始めた2001年度からの累積収益額は196兆9306億円に達し、運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いた実質的な運用利回りは01年度以降25年間の平均で年率4.33%と、長期的目標のプラス1.9%を上回った。
<第2次安倍政権下で株式比率大幅引き上げ>
GPIFの「基本ポートフォリオ」は、年金積立金管理運用独立行政法人法(GPIF法)に基づいて設置された経営委員会(外部有識者を含む)が、厚生労働省が原則5年ごとに実施する「公的年金の財政検証」に合わせて中期目標を策定し、決定する。次期見直しは30年になる見通しで、30年度から5年間が対象になる。
14年には第2次安倍政権下で厚生労働相から基本ポートフォリオの見直しを前倒しするよう要請があり、実質的な運用利回り1.7%という運用目標も示された。目標が確保されるよう外国株式と国内株式合わせた株式比率を従来の24%から50%に大幅に引き上げた一方、国内債は60%から35%に引き下げた。これがその後の株式上昇につながった。
現行の基本ポートフォリオについては26年3月の経営委員会で「見直しの検討は必要ない」と判断したばかり。
現状の基準で許容されている範囲内で国内債に多めに投資することは可能。国内債比率は25%から上下6%の乖離が認められているため、最大31%まで国内債に投資できる。保有比率を1%ポイント上げるだけでも約3兆円の買い需要が生じる。
また、オルタナティブ資産は独立した資産区分としては位置づけず、リスク・リターン特性に応じて国内債、外国債、国内株、外国株の中で管理し、資産全体の5%を上限と定められている。25年度末のオルタナティブ資産の時価総額は5兆2067億円で積立金に占める割合は1.7%だったため、国内債に振り分ける余地が残っている。
さらに、為替ヘッジ付き外債が国内債と位置づけており、国内債を巡る区分変更があれば追加の投資余地が生まれる可能性もある。
GPIFはより精緻な資産配分の比率調整(リバランス)が可能になるとして、25年からは国債入札に直接参加している。
<米国も関心>
米財務省は1月の外国為替政策報告書でGPIFが14年に国内債の配分を減らして外債と外国株式の配分を引き上げたことについて、日銀の量的・質的金融緩和を背景に国債利回りが極めて低かったさなかに行われたと指摘。これが日本からの広範な資本流出を引き起こし、日本政府の円安誘導の取り組みに一役買ったという観測が市場で浮上した、との見解を示している。
昨年6月の報告書では日本の「大規模な公的年金基金など政府系投資機関は、リスクを加味した収益や分散投資のために海外に投資すべきで、競争力を念頭に為替レートを目的にすべきではない」とし、GPIFの対外投資による円安圧力をけん制した。
25年9月11日の日米財務相共同声明でも年金基金など政府系投資機関による「海外への投資は、引き続きリスク調整後のリターンや分散化の目的で行われ、競争上の目的のために為替レートを目的とはしない」とくぎを刺している。
半期に一度の外国為替政策報告書は近く発表される可能性がある。