Miho Uranaka
[東京 16日 ロイター] - 7月のロイター企業調査で、長期化している円安について聞いたところ、5割を超える企業が業績にマイナスの影響が出ていると回答した。一方で、世界的な人工知能(AI)・半導体ブームによる需要に後押しされ円安がプラスに作用しているとの答えも3割以上あった。ただ、事業にとっての妥当なドルの水準は多くが140─150円台とみており、足元の160円台は負担が大きいとの見方が目立った。
調査は7月1日から10日にかけて実施し、発送先511社のうち218社から回答を得た。
ドル高/円安傾向が業績に与える影響について質問したところ、全体の40%が「ややマイナス」、15%が「大いにマイナス」と答えた。企業からは「中東情勢による原燃料の供給不安は多少緩和されつつも、コストアップと先行き不安は依然解消されていない」(ガラス・土石)、「まだナフサ価格は高いレベルにあり、販売金額と原材料価格の面で不確定要素が多い」(化学)など、中東情勢や円安によるコスト増を挙げる声が多く聞かれた。世界経済や通商政策の先行き不透明感を背景に、顧客の設備投資が慎重になっているとの指摘も複数みられた。
一方、「ややマイナス」に次いで多かった答えは「ややプラス」の29%で、「大いにプラス」の4%と合わせると33%が業績に対し何らかの形で好影響が出ていると答えた。「AIサーバー関連製品が好調」(金属・機械)、「半導体市場向け製品の受注が急拡大している」(機械)、「これまで見たことのない注文数量、注文額になっている」(精密機器)といった声が相次いだ。半導体やデータセンター向け需要、旺盛な設備投資を背景に受注が拡大しているとの回答が目立ち、円安下での世界のAI関連需要が業績を押し上げる構図が鮮明になった。
同様の質問をした2024年5月の調査では、当時のドルの上値めどとされていた155円を超える円安は業績にマイナスと答えた企業は5割弱、プラスと答えた企業は25%で今回の調査ではいずれの回答も増加。長引く円安の下で、業績に対する影響も二極化が進んでいることがうかがえる。
ただ、事業にとって妥当と考えるドル/円の水準については「140円台」との答えが28%で最も多く、「150円台」が27%と続き、足元相場の「160円以上」はわずか1%で現実と理想には大きなかい離がみられる。
企業からは「160円台の円安水準は国内物価高の一因となっており、食品スーパーとしては消費の後退要因になる」(小売)、「行き過ぎた円安はそもそも国内経済に悪影響を及ぼすため制御する必要がある」(情報サービス)といった声が聞かれた。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは、円安は輸出産業にはメリットではあるが、「企業収益が改善しても円安の負担は価格転嫁を通じて家計に移っている」とし、日本経済全体で円安のデメリットが薄れたわけではないとの見方を示した。
円安傾向が続く中でも、26年度のドル/円想定レートについて半数近い48%は円安方向への「変更は考えていない」と答えた。「円安影響は換算上のプラス効果はあるものの、現時点で事業計画や為替対応方針は変えていない」(ゴム)、「単体では輸入コストやエネルギーコスト増で悪化する一方、連結では米国事業が円ベースで改善する。為替対応は特に検討していない」(窯業)などの声があった。
「変更を考えている」は18%、「すでに実施した」は5%と合わせても2割程度で、新たな想定水準としては150円台が57%、160円以上が43%だった。
もっとも、実務面では円安への対応を進めている企業も多い。「為替レートによる販売価格見直しの交渉を早期に実施している。通常は半期だが四半期単位に(見直している)」(輸送用機器)、「輸入品の原価上昇による影響があり、為替予約を一定程度活用している」(小売)、「運賃への価格転嫁を促進」(運輸)など、価格転嫁や為替ヘッジで円安影響の抑制を図っている。