Jihoon Lee Daewoung Kim Gregor Stuart Hunter
[ソウル 14日 ロイター] - 韓国の李在明大統領が昨年、韓国総合株価指数(KOSPI)の目標値を5000ポイントに設定した時点では、それはあまりに野心的に思われた。横ばい状態だった株価をほぼ倍増させる必要があったからだ。
それからわずか1年後、KOSPIは人工知能(AI)ブームに後押しされた記録的な高騰を通じて8000を突破し、李氏が韓国株は依然として割安だと主張する事態になった。
ところが足元では、そうした目覚ましい値上がりが、最も当惑を誘うような反落相場へと姿を変えている。
KOSPIは6月下旬以降に価値の4分の1を失って弱気相場に突入した。それでも今年の主要株式市場としては世界最高のパフォーマンスを維持しているものの、この激しい乱高下はAI主導による韓国株の活況が持つ力と危うさの両方を浮き彫りにした形だ。
半導体大手のサムスン電子とSKハイニックスの爆発的な収益成長は、引き続き投資の根拠となっている。しかし信用取引によって加速し、わずか2銘柄に資金が集中して実体経済との乖離(かいり)を深めている相場上昇に対し、規制当局は警戒を強め、投資家は激しい変動にさらされつつある。
シンガポールのインドスエズ・ウェルス・マネジメントのアジア担当チーフストラテジスト、フランシス・タン氏は「これは警鐘だ。強欲な人々にとっても、臆病な人々にとっても。恐れていた人々にとっては(中略)今は絶好の買い場だが、既に過剰なポジションを持っているなら、半導体への投資が不安定なゲームになり得ることを思い知らされるだろう」と語る。
14日のKOSPIは7000を下回って取引され、終値ベースの史上最高値の9114.555から約25%下落して6月下旬から弱気相場にあることが確認された。
「爆発的に上がったのと同じように、爆発的に下がった」と話した大学生のイ・スンホさん(24)は、強気相場の中で信用取引を利用して1000万─2000万ウォン(7000-1万3000ドル)を3億ウォンに増やしたが、その後それが消えていくのを目の当たりにした。
イさんは「母や祖母のような人々は、サムスンは韓国一の企業だと言いながら、レバレッジ投資のリスクを完全には理解していないのだと思う。2倍の速さで上がることは考えても、2倍の速さで下がることは考えていない」と話す。
<激しい乱高下>
SKハイニックスは、ほかに類を見ないほど市場の熱狂を象徴する銘柄と言える。同社株価は借金を駆使した大規模な投資資金流入を背景として3倍に膨れ上がり、外国企業による米国上場としては過去最高となる265億ドルの資金調達に成功。米国での初値は公開価格を14%上回った。
同時にSKハイニックスの株価は、史上最も激しい変動に翻弄(ほんろう)されている。13日のソウル市場で14%急落する一方で、香港市場では同社株に連動する2倍レバレッジの上場投資信託(ETF)が30%超暴落。売りが売りを呼ぶ展開で下落幅が増幅され、KOSPIを8%押し下げる要因となった。
KOSPIは現在、サムスン電子とSKハイニックスの2社だけで時価総額の半分強を占めており、どちらかの銘柄の急激な動きがあれば市場全体を圧倒してしまう。
新韓証券のアナリスト、パク・ウヨル氏は「KOSPIにおけるサムスンとSKハイニックスの比率が高いため、個別株レバレッジ商品の指数への影響は他国よりも大きい」と指摘する。比較すると、米国の巨大株であるエヌビディアでさえ、S&P総合500種に占める比率はわずか7%だ。
KOSPIのボラティリティー指数(恐怖指数)は2025年末の28.85に対して、今年6月29日には過去最高の97.99を記録し、14日も82.07となった。
韓国金融監督院(FSS)は、これらの商品を監視し、必要に応じて過剰なマーケティングが行われていないか調査すると発表した。韓国銀行(中央銀行)も、個別株ETFが市場を歪め、ボラティリティーを高めていないか注視していると議員に伝えた。
<個人投資家主体の市場に>
外国人投資家の資金は今年、韓国株から過去最高となる約1100億ドルが流出した。主な理由は、急騰する韓国の市場価値によってポートフォリオの配分が歪むのを防ぐためだ。その結果、国内の個人投資家が買い手としての負担の多くを担うことになった。
個人投資家は6月に42兆4000億ウォン相当のKOSPI銘柄を購入したのに続き、今月も13兆2000億ウォン分を購入した。彼らのKOSPI銘柄への信用取引残高は、6月24日に過去最高の29兆8000億ウォンに達し、今月14日時点で28兆ウォンとなっている。
CLSAのチーフ株式ストラテジスト、アレクサンダー・レッドマン氏は「韓国は依然として運用資産の中で(ベンチマーク比)最大のオーバーウエートだが、私は減らし始めている。懸念しているのは、個人投資家が多くの信用取引を利用しており、彼らが主導権を握っている点だ」と述べた。
確かにサムスンとSKハイニックスの予想利益は急激に上昇しており、株価が2倍以上になったにもかかわらず、予想利益に基づく株価収益率(PER)は実際には今年になって低下している。
だが、一部のベテラン投資家は静観している。
著名投資家ジョージ・ソロス氏と共同でクォンタム・ファンドを設立したジム・ロジャーズ氏は「一本調子で上がってきた市場で買いを入れるのは好きではないので、今は何もしていない。私は、市場が低迷し、周囲に不幸や悲観がまん延している状態が好きだ。今の韓国は、まだその状態ではない」と説明した。