過去のモデル:SNSとネットによる「受動的・一方向の過激化」とその限界
過去四半世紀における国際テロリズムの歴史を振り返ると、インターネットとソーシャルメディア(SNS)は過激化を媒介する中心的な役割を果たしてきた。
2000年代以降、国際テロ組織アルカイダは、英語版の機関誌のオンライン配信や、過激な説教者による動画投稿を通じて、世界各地の個人に思想を伝播させる手法をとった。
その後、2010年代に台頭した過激派組織イスラム国(IS)は、さらに洗練されたSNS戦略を展開した。彼らは高画質なプロパガンダ動画を制作し、ツイッターや暗号化アプリであるテレグラムなどを駆使して、特定の国や地域にとどまらない広範な支持者を獲得した。
これらの時代における過激化の典型例は、組織からの一方的な情報発信を個人が受動的に消費する、あるいは限定的なオンラインコミュニティ内で情報が循環する形で進行した。
インターネット上で過激な思想に触れ、組織の直接的な指揮命令や資金援助を受けることなくテロを実行するローンウルフ(一匹狼)型のテロリストは、このようにして誕生した。
彼らはネット上の掲示板やSNSのエコーチェンバー現象、すなわち閉ざされた環境で同様の過激な意見ばかりに触れることで、自らの認知を次第に先鋭化させていった。
しかし、この従来のインターネットモデルには一定の限界も存在した。テロ組織の側から見れば、不特定多数のネットユーザーの中から過激化の素質を持つ個人を見つけ出し、手動で直接的な勧誘アプローチを行うことには多大な時間的・労力的なコストがかかった。
また、過激化を試みる個人の側にとっても、SNSや掲示板の書き込みはあくまで静的な情報か、あるいは断続的な非同期のコミュニケーションにとどまるため、現実世界における孤独感や疎外感が即座に、かつ完全に解消されるわけではなかった。
既存のインターネット空間における過激化は、治安当局の監視の目が届きにくい暗部で行われつつも、一定の行動パターンや発信源、あるいはオンライン上のコミュニティという形で足跡が残りやすく、当局が検知するための手がかりを比較的残しやすいという特徴を持っていた。