メディアではしばしば、医療崩壊や健康保険の財務危機が話題になる。危機的状況が現実味を帯びてきたとも解釈できるが、そもそも問題も、その構造的な要因も非常に複雑だ。解決策がないようにさえ思えてしまう。
しかし、『外国人患者――医療ツーリズムと日本の現実』(山田秀臣・著、新潮新書)の著者は異なった考えを持っているようだ。
腎臓内科が専門で、現在は東京大学の医学部附属病院の国際診療部に在籍する医師である。長らく国際医療にも携わり、日本医療の国際化の最前線に立ってきたという。
確かに現在の日本の医療制度は危機に瀕しています。少子高齢化で医療費は増大し、国民の負担は増える一方なのに病院の倒産は相次ぎ、医師、看護師を含め医療従事者は不足しています。
それでも、光はある、と私は思っています。
そのひとつが外国人患者による「医療ツーリズム」です。(「はじめに――日本医療の未来のために」より)
「医療観光」とも訳される医療ツーリズムとは、患者が他国の医療を利用して治療を受けること。インバウンドの一分野であるが、24時間365日対応可能な医療機関が近くにあり、誰でも受診できて、レベルも高ければ費用も安い日本の医療体制は、海外から見れば非常に魅力的なのだそうだ。
そうした外国から訪れる人たちが日本で治療を受け、お金を落としていってくれれば、窮状にある日本の医療を救えるかもしれないと著者は考えているわけである。
実際、日本の医療ツーリズム市場も伸張しています。2025年の市場規模は12億4000万ドル(約1860億円)ですが、2034年までに116億2000万ドル(約1.7兆円)規模へ成長するという予測もあるのです。(「はじめに――日本医療の未来のために」より)