日本のジェンダー・ギャップ指数は長い間低迷し、世界経済フォーラムによると昨年は148カ国中118位で、G7(主要7カ国)では最下位。日本社会のジェンダー問題は依然として継続している。では、日本写真界におけるジェンダー構造はどうか。
そのヒントを写し出したのが、遠く離れた南仏アルルで行われた企画展だ。24年の夏、世界最古で最大規模の写真祭『アルル国際写真フェスティバル』において、日本の女性写真家に焦点を当てた展覧会が行われた。『Iʼm So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now』と題した同展を企画したのは、ポリーヌ・ヴェルマール(米ブルックリン美術館写真部門キュレーター)、竹内万里子(批評家・作家・キュレーター/京都芸術大学教授)、レスリー・マーティン(米プリンテッド・マターエグゼクティブ・ディレクター)だ。
その後、ハーグ、フランクフルトの巡回を経て、今年ついに日本へ「凱旋」。『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』と題して日本向けに再構成され、7月4日から東京・渋谷のヒカリエホールで開催される。今年から来年にかけて、さらにロンドン、ニューヨークへ巡回する。
【第1章「写真」をめぐる冒険−想像力を解き放て!】
今井壽惠、岡上淑子、オノデラユキ、小松浩子、今道子、杉浦邦恵、多和田有希、蜷川実花、山沢栄子
【第2章「記録と記憶」をめぐる冒険−目に見えないものに向かって】
石内都、石川真生、岩根愛、志賀理江子、常盤とよ子、西村多美子、米田知子、藤岡亜弥、渡辺眸
【第3章「女性」をめぐる冒険−ジェンダー、身体、セクシュアリティ】
岡部桃、片山真理、澤田知子、長島有里枝、野村佐紀子、やなぎみわ
【第4章「日常」をめぐる冒険−見過ごされた風景の中で】
潮田登久子、川内倫子、楢橋朝子、野口里佳、原美樹子、ヒロミックス
日本国内で日本の女性写真家に光を当てる試みは、実は珍しいものではない。1990年代以降、東京都写真美術館をはじめ各美術館が、日本の女性写真家を積極的に紹介する展覧会を継続して開催してきた。にもかかわらず、今日、国際的に高い評価を得ている日本写真家としてまず名前が挙がるのは森山大道や杉本博司らに代表される男性たち。近年の海外での個展開催数を見ても明らかであろう。こうした写真史の動向の中で、仏アルルで開催された本展は、日本の女性写真家のみに焦点を当てた大規模展として、特に高い注目を集めた展示の1つであった。
一方で、国際的な文脈において、日本女性写真家がこれまで全く注目されてこなかったわけではない。彼女たちが日本国外で注目された最初の契機となったのは、89年に米ペンシルベニア州のリーハイ大学アートギャラリーで開催された『Japanese Women Photographers: From the ʼ50s to the ʼ80s』であった。同展では、写真評論家の福島辰夫と写真家ハンス・フライシュナーのキュレーションにより、石内都、今井壽惠、今道子、山沢栄子ら8人の女性写真家が紹介された。時代区分や出品作家を見ても、今回の展示はこれら過去の企画の問題意識を踏まえつつ、その射程を現代に拡張したものと捉えることができる。
本展では50年代から現代に至る日本女性写真家の実践が中心に取り上げられており、なかでも現代作家により重点が置かれている。既に国際的評価を確立している石内や、川内倫子、長島有里枝をはじめ、ミドルキャリアの藤岡亜弥、小松浩子らまでおよそ30作家の作品が紹介される。
国内外で確固たる評価を築いてきた日本女性写真家たちの作品が一堂に会する機会は、日本国内においても極めて貴重だ。日本女性写真の多様な展開と彼女たちの活動がいかに豊かな広がりを持ってきたのかに触れるための、格好の導入となるであろう。
【連載第1032回】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2026年6月30日号掲載
*展覧会の詳細は、以下のリンク先でご確認ください。
『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』
2026/7/4(土)~8/26(水)
会場:ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)
【キュレーター】
竹内万里子(日本展担当キュレーター)、ポリーヌ・ヴェルマール、レスリー・A・マーティン
<連動企画>
『STILL/LIFE 静寂の余韻に』
2026/7/4(土)~7/20(
月・祝 )
会場:
Bunkamura Gallery 8/ (渋谷ヒカリエ8F)
[出展作家]
清水裕貴、スクリプカリウ落合安奈 、鈴木のぞみ 、頭山ゆう紀 、 中井菜央 、 細倉真弓 、𠮷田多麻希
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