Matt Spetalnick Humeyra Pamuk

[ワシントン 14日 ロイター] - トランプ米大統領(共和党)は、ようやくイランとの戦闘終結と和平に向けた合意にこぎ着けた。これによって不人気な戦争から自らを解き放ちつつ、危機の最中に高騰したエネルギー価格を緩和する方向へと世界の市場を導く道を見出したのかもしれない。

しかしながら、トランプ氏が妥協して達成した合意は、戦争初期に掲げた目標の多くに届かない内容となったもようだ。このため与党共和党内のタカ派からの攻撃にさらされかねず、開戦前よりも米国の戦略的立場が悪化したように見える。

イラン攻撃開始から3カ月余りが経過した14日、トランプ氏は和平交渉におけるこれまでで最も重要な進展となる「覚書」を承認した。これには、米国のガソリン価格引き下げに寄与する可能性がある、ホルムズ海峡の再開に向けたイランの確約が含まれている。

同時に、パキスタンが仲介したこの合意(本文は直ちに公開されず)は、イランの核開発計画停止というトランプ氏の主要な戦争目的を巡る議論を先送りするなど、米国側の大きな譲歩も求めているもようだ。

数千人もの死者を出して国内経済に打撃を与え、11月の米議会中間選挙を控えて自身の支持率を押し下げている戦争を終結させたいトランプ氏は、出口戦略を追い求める姿勢を強めてきた。

ただ、今回の合意発表に至る前にも、トランプ氏のそうした取り組みはイラン側に譲歩し過ぎていると警告する米政界内部の対イラン強硬派からの反発に直面していた。

覚書の調印式は19日の予定だが、多くの重要な疑問は未解決のままだ。

米・イラン双方とも、60日間の停戦延長と恒久和平交渉の開始を目的とするこの枠組みに対して時として相反する解釈を提示している。

複数のアナリストの話では、トランプ氏が直面するのは米国が弱体化したように見えるリスク。一方、イランは軍事的・経済的に打撃を受けたものの、最終的にはより大きな交渉力を手にする可能性がある。

米国とイスラエルの攻撃を受けたイランが、軍事能力を大幅に低下させたことは疑いようがない。とはいえ、イランはホルムズ海峡を事実上封鎖して世界の石油・ガス供給の5分の1を遮断しながら猛攻に耐えうることを証明して見せた。

<達成阻まれたトランプ氏の目標>

2期目の大統領戦で外国への介入を避け、米国の経済的懸念に焦点を当てると約束して当選したトランプ氏は、今回の合意を米国の圧倒的な勝利だと主張している。

もっとも、勝ったという訴えはイラン側も変わらない。結局、大半のアナリストは、かつてイランに「無条件降伏」を要求したトランプ氏が、しばしば変化する戦争の目標の多くについて達成を阻まれたという見解で一致している。

トランプ氏が戦争当初にイラン国民に転覆を促したイランのイスラム神聖政治体制は、ほぼ無傷のままで、米国とイスラエルの共同攻撃で殺害された指導者たちの後継者は、さらに強硬派であるように見受けられる。

イランが弾道ミサイル計画を解体し、地域の代理勢力への支援を停止するという以前の要求も満たされていない。それにもかかわらず、ある米政府高官は記者団に、予備合意はトランプ氏の核心的な目的を達成したと言い切った。

さらに覚書はイランの核爆弾級に近い濃縮ウランの在庫の行方を完全には解決していない。

トランプ氏は13日の交流サイト(SNS)への投稿で、米国が介入して材料を確保した上で「希釈・破壊」すると述べたが、予定表は示さなかった。イラン政府高官は、自国で在庫を「希釈」することには同意したが、そのメカニズムはまだ決まっていないとだけ語った。

元米国務次官補代理で現在は米シンクタンク、大西洋評議会に所属するビクトリア・テイラー氏は「この合意はさらなる戦争を回避するための最善の結果である公算は大きいが、米国がそもそも戦争ではなく外交を追求していれば達成できたであろう内容と何ら変わらない」と切り捨てた。

また最終的な合意は、オバマ元大統領(民主党)が2015年にイランの核計画を抑制するために締結し、トランプ氏が1期目の18年に破棄した「イラン核合意」よりも改善された内容になるかどうかも分からない。

複数の米政府高官は、数十億ドルのイラン資産の凍結解除や制裁緩和は、イラン側が条件を満たすかどうかに基づいて段階的に行われると主張している。一方イランは一部の資金提供と制裁緩和を前倒しで行うよう求めている。

いずれにしてもこのような道筋を開けば、トランプ氏はオバマ氏に対して長年浴びせてきたのと同じく、イランの核の野望やその他の安全保障上の脅威を支えるための経済的救済措置をイランに提供しているという非難を浴びかねない。

<イランの脅威は持続>

トランプ氏とその側近は、イランが核兵器を二度と取得しないという約束を取り付けたことを大きな成果だと喧伝している。

ただイランは、開戦時に空爆で死亡した当時の最高指導者ハメネイ師が発した、核爆弾の開発を禁じるイスラム教の布告(ファトワ)を常に順守すると長年宣言してきた。

覚書は、イランが速やかにホルムズ海峡の航行制限を解除し、米国がイランの港の海上封鎖を解くことを求めているが、イラン側は海峡管理において開戦前には持たなかった役割を維持しなければならないと主張している。

また海峡の再開自体は、戦争前の現状に戻るだけに過ぎない。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・アルターマン氏は「イランは、著しく弱体化した状態であっても、意のままにホルムズ海峡を封鎖できることを証明した。その事実は変わらない」と指摘する。

トランプ氏が始めた戦争によって米軍の支出は数百億ドルに達し、弾薬の備蓄は枯渇。開戦前に協議がなかった欧州の同盟国との間でも緊張が深まっている。

その上、トランプ氏にとってのもう一つの厄介な課題に挙げられるのは、戦時中に緊密な同盟を築いたイスラエルのネタニヤフ首相への対応だ。ネタニヤフ氏は、イスラエルは覚書の当事者にはならないと発言しており、トランプ氏とネタニヤフ氏は14日、イスラエルがレバノンで継続している軍事作戦を巡って衝突した。

米国と同盟関係にあるペルシャ湾岸諸国は平和的な解決を求めてきた。しかし今やこれらの国は、残された兵器で依然として自分たちを脅かすことができる、傷を負った隣国イランと向き合わなければならない。

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