「簡素化された難民申請手続き」に住民は不信感
過激な暴動に発展した背景には急速な移民流入への潜在的な不満、生活困窮、ずさんな難民審査システムへの根強い不信がある。公営・民間の住宅を転用した「シェアハウス」の普及で賃貸住宅の家賃が過去5~6年で50%超も値上がりした。
地元の若者や困窮層が締め出される一方で、外国籍の住民が公的に提供された住宅に入居していく状況に「地元住民を差し置いて外国人が優遇されている」という強い不満が蓄積していた。SNS上ではシェアハウスの住所リストが拡散され、襲撃を誘発した。
23年当時、保守党政権が難民申請の未処理を解消するため導入した「簡素化された手続き」に住民は不信感を募らせていた。スーダンを含む6カ国からの申請者は対面面接を免除され、質問票の提出だけで処理された。審査の質より処理目標の達成が優先された。
被害男性の家族「こうした暴力は望んでいない」
警察による申請者の背景チェックは事実上、省略された。拙速な難民認定システムが事件を引き起こしたと住民は怒りを暴発させている。これに対し被害男性の家族は「こうした暴力は望んでいない。多くの移民が医療や観光業で国を支えてくれている」と沈静化を訴えている。
英オックスフォード大学移民観測所は英紙タイムズに、国境にチェックポイントを設けない限り、人の流れを止めることは不可能であり、現実的解決策は実効性のある新たな英・アイルランド間の送還協定を再構築する以外にないと指摘する。
今回特異だったのは北アイルランドの歴史的分断の象徴であるプロテスタント系とカトリック系が共闘したことだ。地元教会関係者は「40年前はカトリックがプロテスタント地域から焼き出された。今度は肌の色が違うという理由だけで移民が焼き出されている」と危惧する。
過去の凄惨な民族対立の構図が新たな「人種ベースの対立」に形を変えて再生産されている。