強硬な治安対策の成果と、潜在する「地下化」のリスク
事件後、バングラデシュ政府は大規模な対テロ掃討作戦を実施し、治安機関の権限強化や情報収集体制の拡充を進めた。その結果、ネオJMBを含む主要な過激派ネットワークは大きな打撃を受け、国内における大規模テロの発生頻度は低下したと評価されている。
ただし、この成果は主として組織的活動の抑制に関するものであり、過激思想そのものの根絶を意味するものではない。また、強硬な治安対策は人権や法の支配との緊張関係を伴う可能性があり、長期的には過激思想の地下化や潜在的な不満の蓄積を招くリスクも指摘されている。
本事件を広い文脈で捉えるならば、ローカルな武装勢力とグローバルなジハード主義が緩やかに結びつく現代テロリズムの特徴を示す事例といえる。
ただし、ここで留意すべきは、ダッカ事件自体は複数の実行犯による組織的攻撃であり、いわゆる単独犯型テロとは性質を異にする点である。したがって、近年増加が指摘される個人単位の急進化や小規模攻撃との連続性を論じる場合には、両者の差異を踏まえた慎重な整理が必要である。
また、国内的要因として、バングラデシュにおける世俗主義とイスラム主義の対立、政党間の激しい政治的対立、さらには急速な経済成長に伴う社会的格差の拡大なども、過激化の背景として一定の影響を及ぼしていると考えられる。
ただし、これらは直接的な原因というよりも、個人の不満や疎外感を増幅させる環境的要因として理解するのが適切である。