米テキサス州ラボックにある肉牛の肥育業者「ラボック・フィーダーズ」はドワイト・アイゼンハワー氏がこの国の大統領だった時代から西テキサスで肉牛を肥育してきた。だが何列も立ち並ぶ牛舎は今や、空っぽのまま放置されている。

共同経営者の1人によると、70年の歴史を持つ肥育場は閉鎖の危機にひんしている。原因は昨年、米政府がメキシコからの生体牛の輸入を止めたことだ。それまでここで育てていた肉牛は、大半がメキシコから仕入れたものだったため、その供給が完全にストップしてしまったのだ。

米政府は1年前、メキシコ当局が対応に苦慮していた肉食寄生虫「ラセンウジバエ」の侵入防止を目的に、メキシコ産の家畜に対して国境を封鎖した。今月に入って、最初の寄生がテキサス州の牛牧場で60年ぶりに確認され、既に供給不足、トランプ米大統領の貿易政策、深刻な干ばつのために大打撃を受けている米国の牛肉産業にとって新たな試練をもたらした。

一方、メキシコ北部の国境に接するコアウイラ州では明るい兆しが見えている。かつて生体牛を米国に送っていた農家が、今や牛肉を米国に輸出しているのだ。

米国最大の牛肉生産州であるテキサス州の牛肉業界は、国境封鎖によって1000億ドル規模の経営縮小を余儀なくされた。だが、メキシコの牛肉業界はこの逆境を好機と捉え、肉牛をより長期間飼育して食肉に加工する準備を整えるため、自ら肥育場の建設と加工施設の拡張に投資した。

サプライチェーン(供給網)をこのように拡大させることで、利益率が高くなる可能性がある。メキシコ産の米国向け牛肉輸出量は2026年の最初の4カ月間で急増した。

米国内の肥育牛数が減少