1980年の「光州事件」の記念日に当たる5月18日、スターバックス・コリアは「タンクデー」と名付けたコーヒー・タンブラーの販促キャンペーンを開始した。
販促コピーには「机にドン」という文言が含まれていた。この表現は韓国の成人なら誰もがすぐに思い出す。87年に民主活動家の朴鍾哲(パク・ジョンチョル)が拷問死した事件をめぐる警察の隠蔽工作を想起させる言葉だ。朴の取り調べ担当者らは当時、「机をドンとたたいたらその場で死んだ」と釈明していた。
問題の5月18日は、韓国で最も政治色の強い記念日の1つだ。79年のクーデターで実権を握った軍事政権の全斗煥(チョン・ドゥファン)国軍保安司令官(当時)は翌80年、市民蜂起を鎮圧するため南西部の光州に戦車や空挺部隊を投入。政府の公式発表による死者は約200人だが、生存者や市民団体は長年、実際の犠牲者数ははるかに多いと主張してきた。一部には数千人規模との見方もある。
その日に「タンクデー」キャンペーンを実施したことは、露骨な冒瀆行為と受け取られた。会社側によれば、タンクは単に「水を入れる大きな容器」の意味だが、もちろん「戦車」の意味もある。
炎上を受けて、スターバックス・コリアはキャンペーンを中止。複数回にわたり謝罪した。同社株の67.5%を保有するイーマートを傘下に持つ新世界グループの鄭溶鎮(チョン・ヨンジン)会長は、スターバックス・コリアのCEOと上級マーケティング幹部を解任し、謝罪声明を発表。全社的な倫理教育の実施を約束した。
次のページ