ラブコメディーはとかく「登場人物の生活が現実離れしている」と批判され、その批判は往々にして正しい。

『恋愛適齢期』などナンシー・マイヤーズの監督作品で中年のヒロインたちが暮らすのは、窓から光が降り注ぐ豪邸。『セックス・アンド・ザ・シティ』や『プラダを着た悪魔』の若いヒロインはマンハッタンの小じゃれた部屋に住み、仕事はまだ駆け出しなのにやけに羽振りがいい。

ラブコメには、確かにキャラクターの経済状況を極力曖昧に描く傾向がある。そもそも、ラブコメに限らず映画の登場人物は一般人より6〜9割増しでルックスがよく、身なりもヘアスタイルも住まいも現実よりアップグレードされるのが暗黙の了解だ。

ある意味、浮世離れしているのがラブコメの身上。運命の出会い1つで全てが収まるべきところに収まるファンタジーを求めて、私たちはそうした映画を見る。

ところがセリーヌ・ソン監督の長編第2作『マテリアリスト 結婚の条件』には、「経済状況が曖昧」という批判は当たらない(「マテリアリスト」は物質主義者の意)。何しろ登場人物が皆、自分の市場価値をあけすけに口にするのだ。

ルーシー(ダコタ・ジョンソン)はニューヨークにある高級結婚相談所にマッチメーカーとして勤務し、年に8万ドルを稼ぐ。天文学的な額ではないが、なかなかの年収だ。

金、資産、ステータスに対する考え方の違い