日本のヘルスリテラシーの水準が他国より低い原因

日本の状況も楽観できない。健康は個人の自己責任だけでなく、社会制度や生活環境にも大きく左右される。その点、日本は国民皆保険制度に加えて健康診断などの予防体制も整備されており、制度面では比較的恵まれている。だがヘルスリテラシーに関しては、日本人の水準がむしろ他国より低いことが複数の調査で示されている。

その一因は医療制度への厚い信頼にあるのかもしれない。「日本は皆保険のおかげで誰でも容易に医療にアクセスできるが、その分、『困ったら病院に行けばいい』という意識が強く、医療や健康を自分ごととして捉える必要性を感じにくかった面がある」と、東京大学の古井祐司特任教授(予防医学)は指摘する。

また、医師の判断や指示を受け入れることを前提とした受け身の医療観も根強い。「その結果、自ら正しい情報を集めて比較検討し、主体的に判断する習慣が育ちにくかったのかもしれない」

では、ヘルスリテラシーを高めるにはどうすればいいのか。特効薬はないが、まずは情報源に注意を払う意識が第一だ。自分の思い込みや不安に流されず、強い言葉やインパクトのある表現に飛び付かない冷静さも欠かせない。

テクノロジーの取り入れ方にも工夫が求められる。さまざまなウエアラブル端末や健康管理アプリが登場し、自分の健康状態を手軽に可視化できるようになっているが、重要なのはその先だ。データを「見る」だけでなく、生活習慣の見直しや受診といった行動変容につながる一歩を踏み出せるかが分かれ道となる。

生成AIとの付き合い方も最優先課題の1つだ。AIがもっともらしい嘘や古い情報を提示することもあれば、個人情報を流出させたり、最悪のシナリオを提示して過剰な不安をあおったりするリスクもある。

AIに「判断」まで委ねることのリスク
【関連記事】