4月1日に計約150人の乗客と乗組員を乗せてアルゼンチンの港を出航したオランダ船籍のクルーズ船MVホンディウスで、アンデス型ハンタウイルスの集団感染が発生し、これまでに9人の感染が確認され、3人が死亡した(5月15日時点)。5月10〜11日にスペイン領カナリア諸島のテネリフェ島で乗客は下船したが、下船後の発症も確認されている。WHO(世界保健機関)は「より大規模なアウトブレイク(感染症の爆発的拡大)の兆候はない」としつつも、「ウイルスの潜伏期間が長いため、今後数週間でさらに症例が増える可能性がある」と警告している。ハンタウイルスの「正体」と感染対策について、世界の感染症対策をリードしてきた医師の國井修氏に聞いた。(聞き手は本誌記者・大野頼人)
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──まず、ハンタウイルスとはどのようなウイルスなのか。
非常に古いウイルスで、おそらく数百万年以上も前から存在し、ネズミなどのげっ歯類と共に生き、共に進化してきたと言われている。アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、そしておそらくアフリカにも広がっている。
人間に感染する病原体は約1400種類あると言われているが、その6割ほどは人獣共通感染症だ。動物界にも人間界にも存在し、動物から人間へ、あるいは人間から動物へ感染する。その典型例の1つがハンタウイルスだ。
中国では現在でも年間1万人規模の感染者が出ることもあり、累計150万例ほどの症例があるとも言われている。世界全体では年によって10万人規模になる。
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