中東は今、大きな転換点を迎えている。イスラエルとアメリカが2026年2月28日に仕掛けたイランへの軍事作戦の影響は、この3カ国にとどまらず、イランが報復としてホルムズ海峡を封鎖したことで世界経済にも及んでいる。
中東で起きる紛争の根源は必ずしも宗教間もしくは宗派間の対立ではないが、対立の背景を理解するためには宗教への理解が欠かせない。中東のそれぞれの紛争を宗教的な視点からひもとくと──。
近代の中東史の中心は「パレスチナ問題」である。1948年、建国を宣言したイスラエルをアラブ諸国が攻撃して第1次中東戦争が勃発し、その後も戦争が繰り返された。なかでも紛争が固定化するきっかけとなったのが、67年の第3次中東戦争だ。
イスラエルは戦争の結果、パレスチナのヨルダン川西岸やエジプトのシナイ半島、さらにシリアのゴラン高原にまで至る広大な土地を手にし、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地である東エルサレムを制圧した。そしてすぐに、パレスチナが「将来の国家の首都」と主張する東エルサレムを併合し、エルサレム全域をイスラエルの領土にした。
エルサレムはユダヤ人とパレスチナ人の暮らしが息づく生活空間であると同時に、宗教的にも重要な意味を持つ。エルサレム旧市街にある「ハラム・アッシャリーフ(高貴なる聖域)」は、サウジアラビアのメッカ、メディナに続くイスラム教第3の聖地とされる。この聖地には、預言者ムハンマドが足をかけて昇天したと伝えられる岩があり、その上に立つ金色の屋根の建造物がエルサレムのシンボル「岩のドーム」だ。