イスラエルで台頭する宗教右翼
しかし、建国から80年近くがたち、今のイスラエルは世俗派シオニズムが目指した「近代国家」とは別の方向に向かおうとしている。その背景にあるのが「宗教シオニズム」、いわゆる宗教極右の台頭だ。イスラエルで「宗教派」はユダヤ教超正統派を意味し、その焦点は戒律を守りながら伝統的生活を維持することに置かれ、パレスチナ問題については大きな影響力を持たない。一方、「メシア主義者」とも呼ばれる宗教極右は、建国から現在に至る歴史について、メシア、つまり救世主の到来の過程と捉え、「神に与えられた土地」と考えるヨルダン川西岸地区への入植地建設を進めることなどを宗教的義務と解釈している。
パレスチナとの和平協議を求めてきたイスラエルの「和平派」は、イスラエルが民主主義国家であることを重視し、その民主主義性を維持するために、パレスチナとの和平が必要だと考えている。このままイスラエルがパレスチナ人を含む「一国家」となれば、ユダヤ人が多数派ではなくなる可能性もある一方で、国民の一部に選挙権を与えなければ民主主義とは呼べない。ユダヤ人国家と民主主義を守るという相克の結論が、パレスチナを独立させる、つまりは「イスラエルから分離させる」という意味での和平なのだ。
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