精神的なよりどころを求める宗教の在り方を超えて、米政権に大きな影響を与えてきたのがキリスト教プロテスタントの保守勢力「福音派」だ。その存在感は増す一方で、2月末にイラン戦争が始まった後、福音派指導者がドナルド・トランプ米大統領と共にホワイトハウスで祈る姿は世界に衝撃を与えた。

福音派はどのように台頭し、トランプ政権の支持基盤になったのか。福音派研究の第一人者である宗教学者の加藤喜之氏に、ノンフィクション作家の広野真嗣氏が聞いた。(対談の動画は最終ページに記載)

構成・深田莉映(本誌記者)

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──まず、福音派とはどういった宗派なのか。

福音派は一つの教派・教団ではない。アメリカにある多種多様な教派を横断する保守的なプロテスタントの集団だ。1970年代後半以降、共和党との関係を強め、アメリカの保守化を推し進めてきた。

福音派
 

教派を超えたプロテスタントの保守勢力。アメリカ成人の23%、プロテスタントに占める割合は58%で最大。数万人の信者が集うメガチャーチで礼拝を行うこともある。聖書を字義どおり解釈し、キリストの再臨などの終末論を重視する。「ボーン・アゲイン(回心)」をうたったジミー・カーターが大統領に当選した1976年が「福音派の年」と呼ばれ、これを契機に政治的影響力を強めた。アメリカ南部や中西部の共和党支持者が多い。

例えば中絶反対、同性婚反対、伝統的な家族観やジェンダー観を推進する。ジェンダーフリーの考え方やLGBTQ、女性の社会進出など、60年代以降のアメリカで盛り上がった文化的リベラリズムに対してNOを突き付ける宗教集団と考えてよい。この傾向は特に白人福音派に多い。

福音派の信者はどういう人たちなのか。
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