Yusuke Ogawa

[東京 27日 ロイター] - 米国、イスラエルとイランの紛争を受けて、株式や原油市場の乱高下が続いている。日々刻々と情勢が変化する中、ニュースや企業開示をはじめとした膨大な情報を生成AIを使って即時に解析し、投資判断に生かす試みが広がってきた。急速な進化を続けるAIは、波乱相場を乗り越える「切り札」となるのか。

企業調査レポートの自動生成サービスを開始した、アイシェアの長谷川翔平代表に話を聞いた。

――レポート生成サービス「Deemly(ディームリー)」を立ち上げた理由は。

かつて野村証券でアナリストとして働いていた時に抱いた危機感が背景にある。アナリスト業界は基本的に1セクターにつき1人の担当者で足りるため、世代交代が起きにくく、若手や中堅には魅力的なポストがなかなか回ってこない。結果として、バイサイドや他業界に人材が流出し、業界の中間層が空洞化している。

この先ベテランの引退が進めば、日本の株式市場の「価格発見機能」が損なわれかねないと危惧していた。そこへ生成AIの急激な進化が重なり、数カ月の開発期間を経て4月にローンチした。

――具体的な機能は。

このAI分析エンジンは、東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)と常時連携している。利用者は開示済みの決算短信やその他のIR資料を選択するだけで、投資判断に必要な情報をすぐに引き出すことができる。複数の分析モードを用意しており、「ダイジェスト」は業績を要約した上で、過去の開示内容との比較や経営戦略の変化などを整理する。さらに「インサイト」では、株価変動のきっかけとなり得るカタリスト(材料)から、具体的な投資戦略の方向性まで深堀りして解説している。

当該資料の内容だけでなく、ネット上のニュースや株価推移など幅広い情報を基に分析する仕組みだ。

大きな特徴は、目標株価や「買い・売り」といった直接的な投資判断をあえて出さない点である。結果を提示してしまうと思考停止を招くため、プロの投資家がどこをどう見ているのかという「思考パターン」を提供することに主眼を置いている。法規制との兼ね合いもあり、レポートはいずれも無料だ。

――従来のアナリストレポートとの違いは。

決算発表直後の局面では分析のスピードが極めて重要だが、ディームリーを使えば30秒以内にレポートが生成されるので、初心者の個人投資家でも即座に重要論点を把握できる。証券会社のレポートと比べて圧倒的に早いのが特徴だ。内容に関しても、アナリストの速報レポートと遜色がないレベルだと考えている。

またアナリストの減少によりカバレッジから外れる中小型株も増えているが、このサービスであれば東証に上場する企業すべてを対象に分析することができる。

当面は、国内に約1600万人いる個人投資家のうち、個別株を本格的に売買している10万-20万人のアクティブ層の獲得を目指している。数百銘柄を一人でカバーしなければならないヘッジファンドの運用担当者などが活用するケースも出てくるだろう。マネタイズ(収益化)については、株式投資に関する議論や意見交換ができる姉妹サービス側で図る方針だ。

――AI時代に、証券アナリストの役割はどう変わっていくか。

実は、セルサイドアナリストからも、下調べのツールとして使いたいという声が届いている。AIが進化しても、アナリストという職業自体が完全に消えることはないだろう。例えば、経営者の発言の微妙なニュアンスを解釈したり、まだ誰も描いていない独自性のある投資戦略の提示などは、人間の領域として残るはずだ。

AIによってアナリストが不要になるのではなく、むしろ人間の分析力や付加価値がこれまで以上に厳しく問われる時代になると考えている。

(聞き手・小川悠介 編集:橋本浩)

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。