街角が劇場に変わる「ストレンジシード静岡」

演劇祭の期間中、静岡の街にはもう一つの祝祭が現れる。静岡市の中心部で開催されるストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡 2026」(5月3日〜5日)だ。

東京2020パラリンピック開会式の演出を担当したウォーリー木下がフェスティバルディレクターを務めるこのフェスティバルは、劇場を飛び出し公園や商店街を舞台に「日常と非日常の境界線をあいまいにする」ことを目指している。たまたま通りかかった人が足を止め、予期せぬ表現に出会う。劇場に足を運ぶことが難しい人々、赤ちゃん、障害のある人々にとっても開かれた場所だ。

今年のコアプログラムは2本。振付家・鈴木ユキオとイギリスの「Stopgap Dance Company」による国際共同制作のインクルーシブダンス『Peace & Quiet』と、フランスのジャグリング集団「Collectif Protocole(コレクティフ・プロトコル)」による静岡市街地から駿府城公園までの移動型パフォーマンス『One Shot』(観覧無料)だ。

街と社会を隔てる境界線を溶かし、誰もが表現の当事者になる。このフェスの熱気もまた、SPACが目指す「社会のインフラ」としての演劇を体現している。

世界が熱狂するSPAC、地元での「静かなる課題」

SPACの芸術的な評価は、すでに世界のトップレベルにある。フランスのアヴィニョン演劇祭でアジアの作品として初めてオープニングを飾るなど、その成果は海外で高く評価されてきた。

しかし、地元の静岡ではその価値が十分に浸透しているとは言い難い現実がある。調査によれば、静岡県中部での認知度は4割弱にとどまり、県東部や西部ではさらに低くなる。

この「世界的な名声」と「地元の認知度」のギャップを埋めることも、SPACが次に挑む大きな課題だ。「SPAC 2.0」のコンセプトが掲げる「社会のインフラ」としての劇場を目指すうえで、足元の静岡との関係を深めることは、世界への発信と同じくらい重要な命題となっている。

演劇は「羽根飾り」ではない、社会の「インフラ」
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