ヨーロッパが原油相場の急騰に悲鳴を上げている。アメリカとイスラエルがイラン攻撃を開始すると、イランは報復としてペルシャ湾岸諸国を攻撃し、世界の原油供給の5分の1が通過するホルムズ海峡を事実上封鎖。その結果、原油相場は1バレル=100ドルを突破し、110ドルの水準にも達した。
特に大きな打撃を被っている地域の1つがヨーロッパだ。ヨーロッパはただでさえ、電力コストの高さに苦しめられていた。開戦前の時点で既に、ヨーロッパの産業界は中国やアメリカより高い電力コストを負担していたのだ。
しかも、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻を受けて、比較的安価なロシア産化石燃料の輸入を制限せざるを得なくなっていた。この経験により、ヨーロッパは自分たちのエネルギー供給体制の脆弱性を改めて思い知らされた。
いまヨーロッパでは、エネルギー調達の自立性を高め、いわばエネルギー主権を確立することが重要課題になっている。政策当局者たちは、そのためにエネルギーミックスの一環として原子力発電を復活させるべきだと主張し始めている。
しかし市民の間では、原子力発電の安全性と放射性廃棄物に対する懸念が根強い。多くの専門家は、政治家がそのような不安を払拭できるのか疑問視している。
ヨーロッパの反原発の歴史は長い。特に、1986年にウクライナ(当時はソ連を構成する共和国の1つ)で発生したチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故、そして2011年の福島第一原発事故の影響が大きかった。
それに、そもそも原子力発電を復活させればエネルギー自立を達成できるのかもはっきりしない。
EUのウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は、3月にパリで開かれた「原子力エネルギーサミット」で講演し、ヨーロッパが原子力発電を段階的に縮小してきたことは「戦略的誤り」だったと主張。90年にはヨーロッパの電力需要の3分の1を原子力発電で賄っていたが、それが約15%まで落ち込んでしまったと指摘した。「化石燃料に関しては、高価で不安定な輸入に全面的に依存している……目下の中東危機はその脆弱性をありありと浮き彫りにしている」
「原子力エネルギーサミット」のフォンデアライエン欧州委員長の講演(3月10日)
フォンデアライエンが3月の別の演説で言及したように、イランでの戦争が始まって以降、ヨーロッパが購入する天然ガスの価格は50%、石油価格は27%上昇した。これが「依存の代償」だと、フォンデアライエンはきっぱり述べた。