Nora Eckert

[デトロイト 23日 ロイター] - 米東部メリーランド州ボルティモアに住むスーレン・ムーサビさん(28)は、手ごろな価格の電気自動車(EV)の購入を考えている。環境問題への関心に加え、EVの滑らかな乗り心地に魅力を感じるためだ。⁠だが、候補として絞り込んだ3車種は、米国内では事実上入手できない。中国メーカーの車だからだ。

「買えるなら買いたい。せめて試乗の機会だけでもほしい」とムーサビさん。コンパクトさ、豪華な内装、そして何より価格に引かれて絞り込んだ3車は、比亜迪(BYD)、吉利汽車、吉利の高級ブランド「Zeekr(ジーカ―)」のモデルだった。

こうした米市民はムーサ⁠ビさん1人ではない。米国の新車平均価格は5万ドル(約790万円)に近づいており、業界と米国の二大政党が中国車に強い警戒感を示す中でも、安価な中国車に関心を寄⁠せる層は広がっている。

中国車は欧州や中南米、カナダなどでは販売が進む。一方、米政府は車両データをめぐる安全保障上の懸念や国内雇用の保護を理由に、100%を超える関税を課し、米市場への参入を事実上阻んでいる。

欧州では3万ドル未満で買える中国製EVもあり、高度な運転支援ソフトや車載の小型冷蔵庫、同乗者がカラオケを楽しめる機能などを備えた車種もある。

<他国は受け入れ進む>

中国は近年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった。⁠カナダはこのほど中国車に門戸を開き、まず年間4万9000台のEVを受け入れ、関税を6.1%に引き下げることに合意した。メキシコはすでに中国車を大量に輸入しており、中国メーカーは工場⁠建設を検⁠討中だ。

トランプ米大統領は1月にデトロイトで、中国自動車メーカーが米国人労働者を雇用するなら米国進出を受け入れる考えを示した。

しかし今月、米国の主要な自動車業界団体は、競争上の懸念から中国メーカーの参入を禁じるよう求める書簡を政府に提出した。バーニー・モレノ上院議員(共和党)は1月、「私の目の黒いうちは、米国で中国車が販売されることはない」と述べた。

これに対し、ワシントンの中国大使館は反発。「中国製の車が人気なの⁠は品質と技術革新のためだ」と主張した。

<消費者は中国車に興味>

ハリス・ポールやコックス・オートモーティブの調査によると、消費者も中国車の輸入許可については、データセキュリティーや米企業保護の観点から一定の懸念を抱いている。

ただオハイオ州の自動車ディーラー、レット・リカート氏は、中国車が入手可能になればすぐに売れるのは間違いないと語る。

最近のコックス・オートモーティブの調査によると、中国自動車ブランドの米国進出を支持するディーラーはわずか15%で、中国車が米国の安全基準を順守すると信頼している割合は26%にとどまった。

しかし、そうした障害にもかかわらず中国車の購入意欲⁠は収まらない。今後2年間で車の購入を予定する米消費者802人を対象としたコックスの調査では、約半数の49%が中国車を非常に良い、または素晴らしく「お買い得」だと評し、40%が中国車ブランドの米市場参入を支持すると答えた。

車愛好家のユーチューバー、リッチ・ブノワさんは、中国車の最大の魅力は価格だと語る。「効率的で静かで、低コスト。皆、通勤の足が欲しいだけで、誰もが車マニアというわけではないのだから」

彼は今、メキシコでBYDの車を買い、自ら運転して国境を越えようと企てている。「手に入れるにはそれしかない」

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