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五輪での活躍で中国企業にとっても「理想」のスターに(北京市内のバス停) TINGSHU WANGーREUTERS

グーの母親はアメリカでシングルマザーとして、法的に大きな問題もなく子供を育てることができた。中国では一人親は1997年まで違法とされ、今も社会の偏見にさらされるだけでなく、婚外子は法的な証明書の取得が難しいなど厳しい状況にある。

しかし、米中間の移動の気軽さは、近年の政治やアイデンティティーの問題、さらには新型コロナウイルスのパンデミックによって、大きく損なわれている。所持者に中国人のエリート層が特に多いとされるアメリカの投資家ビザも、トランプ前政権下で中国人留学生のビザと共に審査が厳しくなった。

一方、中国ではアメリカとの関係が政治的なリスク要因になっている。さらに習体制では、特に15~16年の中国株式市場の危機を受けて、現金を国外に持ち出すことが(違法な手段でも)非常に厳しくなった。

太平洋を横断する究極の方法はパスポートを2つ持つことだが、中国は二重国籍を認めていない。アメリカなどで市民権を取得した個人は多くの場合、中国政府に報告せずに中国のパスポートも持ち続ける。こうした慣行は特に著名人に多いが、ここ数年の外国人排斥の風潮で俳優や歌手、スポーツ選手などが外国籍を捨てるよう中国社会から圧力を受けている。

2つのパスポートの行方

グーは中国のパスポートを取得するために米国籍を放棄したかどうかに関する質問を避けている。中国の法律上は放棄しているはずだ。

しかし、アメリカのパスポートを放棄したとなれば、アメリカでさらに厳しい批判を受ける。一方で、中国当局が特例としてアメリカのパスポートの保持を認めたとなれば、中国国民の反感を買う。

アメリカのメディアでグーに向けられる厳しい言葉は、アメリカと中国の両方で暮らす人々に対する認識の変化を物語っている。14年前の北京夏季五輪に同じような選手がいたら、どうだっただろう。08年のアイリーン・グーは、両国の親密さを象徴する存在になっていたかもしれない。

しかし今、中国の国民や報道機関は彼女を使ってアメリカをたたき、アメリカの報道機関や国民は彼女を裏切り者扱いしている。

From Foreign Policy Magazine

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