――監督を始めてから、役への取り組み方は変わった?

6歳か7歳の時に一緒にテレビ番組に出ていた俳優がある日、監督を務めていた。俳優が監督もできるなんて信じられなかったけど、「私がやりたいのはこれだ」と思った。知っている女性監督はいなかった。たしか11〜12歳の頃に初めてリナ・ウェルトミューラー監督の映画を見て、「女性も監督になれるんだ!」って。それがずっと心の隅にあり、映画を見たり、俳優の仕事をしたりするときも、監督のような気持ちでいた。だから大きな転換ではなかった。

――『羊たちの沈黙』の公開から今年で30年。撮影当時、特別な作品だと感じていた?

あの映画には一種、畏怖の念を覚えている。自分がこれまで関わった中で最高の映画。いつの時代も色あせない。

ジョナサン・デミ(監督、故人)は愉快で、子供みたいな人だった。あれほど芸術的で心に響くのに、やり過ぎた作品にならなかったのは、彼が完璧に仕上げたから。もちろんトマス・ハリスの原作の素晴らしさもある。

――『羊たちの沈黙』のファンからの質問で、嫌なのは?

「ソラマメとキャンティ」のことはよく言われる。みんなが、あのセリフをまねするのを聞くのは楽しい。嫌な質問は1つだけ。「どうして続編を作らなかったのか?」

私たちはみんな作りたいと思っていた。トマスは新作を書いていて、もうすぐ出来上がる、誰にも見せないと言い続けていた。それで、ジョナサンとアンソニー(・ホプキンス)と私は10年待った。プロデューサーたちもみんな10年待った。だから続編を作らないというのは大変なことだった。それについて特に話をするつもりはないが、よく質問はされる。

――コロナ禍は多くの産業に打撃を与えたが、ハリウッドはなんとかうまくいく道を見つけたのでは?

製作が進んでいる作品もあるが、ほんのわずかだ。だから、製作面で元の調子に戻っているかは分からない。どこも必死にやっているけれど。

アマゾンにはとてつもないお金があり、アップルやネットフリックスはじっくりと、いい作品を待っている。

この10年ほど、人々の習慣は変わるだろうと誰もが言っていた。映画館で見るのは大手のフランチャイズ映画だけで、物語を楽しむ作品は全て配信になる、と。でも、コロナ禍でこれほど変化が加速するとは思っていなかった。

観客の習慣、映画会社の作るもの、配信業者の力と権限に大きな変化があるだろう。私も用意はできている。喜んで、iPhoneで自分の演技を見てもらう(笑)。

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