他の食材については嫌々ながらも価格高騰を受け入れる一方、なぜコメだけは、国民が政府に対して価格引き下げを強く求め、政府も少なくとも表面的にはその要求に応じようとしているのだろうか。その理由は、コメが日本人にとって主食であり、政治的・文化的にも特殊な立ち位置を占めてきたからにほかならない。

一連のコメに対する複雑な感情は、幕藩体制が影響している可能性が高い。

よく知られているように江戸時代は石高制が採用されており、各藩の経済力(今で言うところの国内総生産)はコメの生産量で定義されていた。コメは事実上の貨幣のような役割を果たしており、金融システムとしてコメ本位制が採用されていたと見なすことも可能だ。

江戸時代初期まではこの制度がうまく機能したが、時代が進むにつれて貨幣経済が浸透。コメは貨幣としての機能を失い、結果としてコメの価値は下がり続けた。本来であれば、コメ本位制は破棄されるべきものであり、幕府内でも改革が試みられた(重農主義から重商主義への転換を目指した田沼意次の改革など)。

しかし武士階級にとってコメはアイデンティティーに関わる問題であったことから幕府はこの仕組みを捨てられず、江戸時代末期には武士が激しく困窮するという事態に陥った。

「もっと食べること」が解決策
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