トランプが始めた貿易戦争と中国経済の低迷のせいでエネルギー価格が下がったことも、ロシアの国家予算を圧迫している。国民はまだ飢えてはいないが、物価高と経済の先行き不安からプーチンの戦争に疑問を抱いてもおかしくない。

何しろそれは一向に勝てない、非生産的で不必要な戦争なのだから。

政治指導者が侵略戦争を仕掛けることは危険な賭けだが、その戦争で敗色が濃くなれば危険性は一段と増す。

プーチンは侵攻開始後、自分の決断を信頼するよう国民に求めてきた。多くの国民が信頼し、今も信頼し続けている。ロシアは全体主義国家ではないが、信頼しなかった人たちはあの手この手の制裁を受けたはずだ。

今のロシアは、一部地域で徴兵が行われる一方、全土で政治離れが進む奇妙な状況にある。人々は建前上では「正義の戦争」を支持しつつ、政治には無関心だ。

実質的な権限を一手に握る独裁者になることは非常に危うい立場に置かれることでもある。戦争に勝てばいいが、敗北は政治的な命取りになる。

そのためかもしれないが、後継者問題では長年だんまりを決め込んでいたプーチンが最近それを口にし始めた。彼も気付いているのだろう。愚かな戦争に自分の政治生命を賭けた挙げ句、その戦争に負けつつあることを......。

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